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■この記事の掲載日 2015.07.23

時の人インタビュー

鳥瞰図絵師   村松昭氏 (アトリエ77)

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地形図が苦手な女性にも好評 !
土地の起伏に、森林・川などの地形、
さらに特徴的な動植物や建物が描き込まれた絵地図。
まさに、鳥が空の上から地上を眺めて描いたよう。
村松さんの鳥瞰図を見ていると、
日本各地のこと、見知らぬ土地が身近に感じてくる。
鳥瞰図絵師  村松 昭さん (アトリエ77)
1940年、千葉県市川市に生まれる。
東京都立立川高校卒業後、
桑沢デザイン研究所などでデザイン、
油絵、リトグラフ(石版画)を学ぶ。
1972年頃より、デザインの傍ら、絵地図、
鳥瞰図(ちょうかんず)を作り始める。
2009年、日本を代表する彫刻家
佐藤忠良作ブロンズ像とともに、
桑沢デザイン研究所「桑沢地域賞」を受賞。 
1972年頃より絵地図、
鳥瞰図(ちょうかんず)を作り始める。

作品は絵本『たまがわ』『ちくごがわ』
『ちくまがわ・しなのがわ』
『よしのがわ』『よどがわ』。

『多摩川散策絵図』『奥多摩散策絵図』
『野川散策絵巻』『四万十川散策絵図』
『奥多摩散策絵図』
『秩父・奥武蔵散策絵図』など50点以上。
最新作は『北陸新幹線鳥瞰絵巻』。

現在、東京都府中市在住。

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地図は見ているだけでおもしろい

以前は三多摩を商圏に、
デザイン会社をしていました。
海外ツアーを扱う、
旅行会社からの依頼があって。
ヨーロッパへ行く取材費がなかったので
向こうのパンフレットを取り寄せて、
日本で作ったんです。
その中に、スイスやオーストリアの
美しい山の鳥瞰図が入っていた。
ああ、昔、日本でもこういうのが
あったなぁって気がしてね。
昔というのは江戸時代ですよ。
神社や寺院を中心に描いた
名所絵地図のようなもの、
そういうのをどこかで見てたんですね。
日本版も作ってみたいなって
思ったのが始まりです。

今はもうありませんが、
富士山だったり、大山だったり。
昔は絵図などが沢山あって、
行くとお土産に買ってきた。

地図は見ているだけでおもしろい。
趣味として好きでしたね。

グラフィックデザインからの転向

デザインとは別に、
油絵などを描いていたんです。
地図を描き始めた時、
仕事にしようとは思ってなかった。
でもやるとなると、
調べるのもそうですけど
これは描くにも相当時間がかかる。
ちょっとずつ描いて、
一年でひとつ作る感じです。
しょうがないから、デザインも
だんだんやめていって、
地図が仕事になった。
でも一回作ってそれが小説みたいに
ずっと売れるわけじゃなく、
しょっちゅう変わる。
その度、やり直さなくちゃいけなくて。

印刷も大変です。
たとえば、ここにある天竜川の地図、
以前の印刷はフィルムだったんです。
もうフィルムじゃ出来ないから、
全部デジタルですることになった。
すると一からやり直し。
紙もある程度丈夫じゃないといけない。
見てくれは良くても風が吹いたり、
開いたり閉じたりしてると折り目から
破れてくる。

一番丈夫なのが紙幣の、あの紙。
僕が今使っている国土地理院の
5万分の1の地図はお札と同じか、
その次くらいに丈夫なんです。
破けたら、また買ってもらうというのが
地図なのかもしれませんけど。
破けにくい紙を扱う製紙店や、
丈夫な加工をしてくれる製本所を
探したりしました。
 

 

試行錯誤しながら、絵地図の世界へ。

結局、先生や先輩がいないわけですから、
印刷会社の社長や詳しい人に聞いたりね。
試行錯誤しながら作っていったんです。
どこに鳥がいる、魚がいる…。
たとえば多摩川なら、
その流域の研究をしている人もいるし。
歴史や草花の会、青梅の野鳥の会の
パンフレットを見たり。
我々は頻繁に現地に行けないし、
鳥などはしょっちゅう会うわけじゃない。
でも関係者の方は、四季を通して
観察していますから。

夏がこうなら、冬はどうなのかと、
研究資料を調べたり。
特に鳥は適当に動き回りますし、
この地図は動物や鳥の生態を
表すものじゃない。
またカメラマンが狙ったりするので、
あまり細かく描き込まないように
しているんです。
ただ、この辺りで見られるというのは
聞いて。
実際は山の中が多いので、
あまり人には会いません。
民宿などに泊まったら、
そこのおやじさんから話を聞くことが
多いですね。

一番最初「玉川上水」の地図を
作った時は、カタクリとか草花も
描いたんですけど、保護団体から
採られるから載せないでくれと言われて。
街で保護しているものは載せるとかね。
それから草花のかわりに、
巨樹を載せることにしたんです。
目立つし、持っていかれないし。
しかも500年、1000年とそこに
いるわけですからね。

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親近感がわく多摩川の地図

我々の小さい頃は物がない時代ですから。
この辺りだったら多摩川とか、
外に出てよく遊んでいました。
川もきれかったですね。
その頃いた生き物は、
多少戻ってきていますけど、
川の形が、現在と全く変わっています。
多摩川のような大きい川は、
いきなりポンと橋が出来るわけじゃない。
目を光らせておけば、
何年先くらいまでは大体わかります。

私の朝は早い方。季節のいい時期は、
朝から多摩川の方まで散歩に行ったりね。
立川高校に通っていた頃は、
そんなに散策をしてなかった。
でも立川のことなら、
そこそこ詳しいですよ。
 



1本の川の源流から河口までを、
幅20cm×長さ3mの中に収めた川の絵地図。
「流れる川、しかも曲がりくねった川を
まとめるには、絵地図が最適」という村松さん。
ジャバラ折りのコンパクトなサイズは
散策にとても便利。

 

全国の自然保護団体をはじめ、
口コミで仕事が広がった。

一時期、自然保護団体からの発注が
多かったですね。
たとえば浜松などの遠方、
地元のNPOや自然保護団体から
依頼があった時は、案内人を頼んだり。
静岡の阿部川の支流で、
「藁科川」という短い川があるんです。
ここの地図も頼まれて作ったんですけど、
茶畑がずっと続いてて、とてもいい所。
観光バスでサーッと行くのと違って、
ずっと深く見てますから。
やはり、その土地土地の山や川に
親しみが持てますよね。
子供の頃に遊んだ多摩川はもちろんですけど、
荒川や馴染みのない川でも一年かけて
通っていれば、やっぱり楽しいですよ。

電車やバスがなくなることは
読めなかった。

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この狭い日本で、
電車はどんどんのびていくし、
バスも増えているからと
免許を取らなかったんです。
昔はバスがすごい山道を通って
奥の方まで行ったんですけど、
そのうち道が拡張したり、
アスファルトになると
今度は逆にバスが行かなくなって。
電車もバスもなくなっていく、 
それはちょっと読めなかったですね。
地方へ行っても、地図には鉄道が
あるんですけど朝・昼・夕方の大体3本、
それだと1日1ヶ所しか取材が
出来ないんですよ。
結局、鉄道も使えない。
車で案内してくれる人がいる時は
いいですけどね。

若い頃はしょうがないから
自転車を折り畳んで新宿まで行ってね。
信濃川を作った時は、そこから上高地へ
行くバスがあるんですよ。
夜11時頃行くと朝6時頃着くんです。
そしてバスから折り畳みを出して。
若い頃はタフでした。
その頃のことが貯金になっているのか
わかりませんが、健康です。
この仕事は、確かに体力が要りますね。

受け継ぐ人はいない。
でもどこかでまた、
モノ好きが始めるかも(笑)

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5万分の1の地図に鉛筆で色をつけると、
山や川などがハッキリとわかり、
立体的になってくるんです。
あとは現地に行って
書き込んだりしていけばね。
仕事は全部、一人でしています。
取材に出るとまたリズムはガラリと
変わりますが、一日大体15時間ほど
描いてますね。
沢山はダブってませんが、
前に取材してきたものを描きながら。
疲れたら適当に休んでね。

今は、デザインもパソコンで
簡単に出来る時代。
今どき、ただでこういうことを
習おうという人はいない。
現地に行って、いちいちスケッチしたり
しませんよ、特に若い人は。
鳥なんかかもどこかから持ってきて、
ぴょんぴょんと貼ればいいんですから。
そんなの写真を撮ったら早いじゃないか、
とかね。
まず来ないけど、もし来たとしても
「月給いくら?」ということからでしょう。

この仕事は忍耐力じゃなくて、好奇心。
結局、自然が好きで、
楽しいからやっちゃうんですよ。
変わりもんですね。

子供たちの作る地図は、やっぱりいい。

大体、小学校4年生くらいで
郷土の勉強をしますよね。
たとえば多摩川を軸に、歴史や生物などを
学ぶ総合学習の時間があって。
そういう中で、僕の作った地図を
一生懸命見て、 実際に行ってくれて。
夏休みの宿題として取り組んだんですね。
自分なりに地図を作って、
送ってくれる子供達もいます。
そういう時はうれしいですね。
4年生の時にそういうのを作った子がいて、
毎年なんだかんだ連絡をくれて…
もう大学になるのかな。
地図作りは卒業しちゃってますね(笑)


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鳥瞰図絵師 村松 昭さん