■この記事のカテゴリー 街のかお/立川駅
■この記事の掲載日 2015.08.13

街のかお

純氷とともに

 

                        福島氷室 (立川市羽衣町)

硬い。透明度が高い。雑味がない。
3拍子揃った氷の一級品「純氷(じゅんぴょう)」が、
今年も引っ張りだこ。
かき氷の需要は、数年前の10倍以上と
言われる今 ―
福島氷室の夏は、まだまだ続く。

 



有限会社福島氷室
代表取締役会長   福島美男さん 


あきる野市出身、中学の時、立川へ。
大正8年、創業者である祖父、
福島美喜蔵さんの天然氷に始まり、
親子三代に渡って会社を継承。
3代目美男さんの代から、
貸しおしぼりの新事業も始める。
高品質の「純氷」を様々な目的に応じた
品揃えで提供。軽快なフットワークとともに、
立川はじめ多摩地域で重宝されている。
また鑑賞用の氷アートや彫刻など、
人と氷をつなぐプロデュースも。
「東京都食品衛生自主管理認証制度」に
氷の部で認証されたのは、
現在「福島氷室」一社のみ。
氷業界の伝道者として多方面で活躍中。

福島氷室
[本社・工場]立川市羽衣町2-5-17
042-525-4789
HP  http://f-ice.net/

 

戦いの中で勝ち抜いてきた「純氷」。

昔、うちの祖先が始めたのは、
自然の力で造る天然氷だった。
機械で造る人工氷もありましたけど、
「純氷」というネーミングで
普及し始めたのは
昭和40年代の中頃から。
氷業界の仲間は、氷に対する熱意が
とにかくすごい。
業界が切磋琢磨する様子に
刺激を受けて
うちもこれじゃマズイ、
やはり工夫をしていかないとって。
そうして戦いの中で勝ち抜いて
きたのが今の「純氷」です。
 

氷はすべて食用。今は「純氷」一筋。

「純氷」は何度もろ過し、
不純物を取り除いた純粋な水で
出来るので、衛生的なんです。
ゆっくり時間をかけて凍らせる
ことで、この透明感が生まれる。
うっかり噛むと歯が割れちゃうほど
硬くて溶けにくいのも特徴です。
しかも雑味が全くないので、
料理や飲み物に素材の味を
活かせられる。
溶かして飲んだら、
ほんとにおいしいですよ。
すべて食用なので、冷やすために
使うのはもったいないくらい。
でも彫刻などに使う氷も純氷。
結局、分けられないですから。


 

氷屋としての特色を出していく。

手間はかかりますけど5種類くらい、
粒の大きさを変えて造っています。
割った氷でかき氷をする方もいるので
大きな粒から小さな粒までを混ぜて、
機械の溝に収まる形でミックスして。

居酒屋さんはアルバイトの方が
ほとんどなので、
アイスピックが使えないでしょ。
だからある程度、小さな粒にするとか。
バーやスナックには、
大きめの粒にしたり。
使用する方の目的に応じた、
粒の品揃えを心がけています。


 

 

氷屋は夢を与えられる仕事。

奈良に、氷の神様をお祀りする
氷室神社という神社があるんです。
毎年恒例の「献氷祭」では、
純氷の中に鯛や鯉を封じ込めた
氷柱が奉納される。
我々のように氷を扱う者を護る
神様なので、うちも毎年
お参りしています。

そもそも氷室(ひむろ)っていうのは、
氷や雪を貯蔵するむろ、
電気を使わない冷蔵庫のことなんです。
うちのおやじが音読みにしないと
溶けるだろうと言って、
福島氷室(ひょうしつ)になった。



◆純氷を製造する時の標準規格は、3辺の長さが27cm、56cm、1m5cmの直法体で重さは36貫(135kg)。
 

氷って、昔はただ冷たい石とばかり
思ってました。
運ぶのも重いですしね。
おやじが体調を崩したことがきっかけで
22才の時、大学卒業と同時に入社。
国語の教員になるのが夢でしたから、
最初はもうイヤでイヤで。

夏の3ヶ月は無休、
若いうちは遊びたいでしょう。
今は補助作業ばかりですけど、
昔はガンガン運びましたよ。
一日10本20本と運ぶと
足の指にマメは出来る、
腰にもくる(苦笑)。



狭いけど、氷の作業も
全部ここでやっています。
加工して、冷凍庫に保存して配達する。
うちで出来ないものは
工場で作ってもらいます。
やり続けてみると、
なかなか面白いですよ。
今はまた、原点に戻るって感じかな。


 
製氷会社が作る氷は
粒の大きさが一律なんです。
きめ細やかに提供出来るのは
我々しかいない。
それは自負もあるし、
やんなきゃいけないことだと。
頑張ってる氷屋さんは、
みんなそういう意識だと思いますよ。



◆国立極地研究所のイベント向けに、900個用意された5×4×2cmのアイスキューブ。一つひとつ、手作業で袋に入れて。



 

氷について、いちばん知識があって
シビアなのはバーテンダーさん。

氷が割れる方向、結晶の向き
のことを、「目」と言うんですけど。
これが揃っているほど、
まっすぐに割れる。
氷柱を縦に見た場合、
上の1/3から真ん中辺り、
部位の中で最もいいところ。
バーテンダーの方はそこを
「トロ」って呼んで、
そこだけを指定する。

「目」を知っているから、
アイスピックでポンとやると
きれいに割れる。
バーテンダーの方は
氷を割ると一度水で洗って、
冷凍庫で一晩置くんです。
洗った方がより硬くしまるから。
彼らが氷に関していちばん
知識があるし、
その分要求もシビアですよね。



 

基本がいちばん。
正直に商売するしかない。

「いいものを適正な価格で出していけば
必ず評価される」
経営者の方がよく言われますけど、
ほんとだなって。
最近、またそれがわかってきましたね。
地道に本当にいいものだけを
やっていれば、誰かが見てくれて、
認めてもらえるんだと。
みんな紹介してくれるんですよ。
あそこだったら大丈夫だよって。

氷屋って、何軒もないから
独占みたいに思われるかもしれないけど、
そうじゃないんです。
うちは小さいものでも
すき間的にやってるから、
評価してもらえるところもあって。
やはりいいもの出さないと
負けちゃうし、サービスにしてもそう。

社員によく言うんです。
「常にお客様第一で考えろ、
お前が第一じゃないんだから」って。
社員たちはその意味をわかって
くれていると思いますよ。
だから身体がキツい、
この時間から?というのがあっても
動いてくれますし。

 

座右の銘は
「なんとかなるよ、福島くん」(笑)

若い頃、青年会の活動を
していたんです。
北口の蕎麦屋「無庵」の
竹内君とかと一緒に。
お祭りの準備していて、
もう絶対間に合わないという
状況なんですよ。
若い時だし、僕はA型人間だから
相当ヤキモキして
「どうするんだよ、竹内君 !」って
半ばケンカ腰に。
そしたら落ちついた口調で彼が、
「大丈夫だよ。なんとかなるよ、福島君」って。
なんとかなるよっていうことは、
結局なんとかしちゃうって
ことなんですけど。
 
この酷暑で、土日も注文がバーッとくる。
平日の20倍、30倍って数ですから。
氷切るのも間に合わない。
同じ時間帯に配達が錯綜しちゃって、
お客様から催促の連絡がくる。
でも「なんとかなるよ」。
切羽詰まると
「なんとかなるよ、福島君」って
自分に言う。
すると、それまでイライラしていた
ものが、スッとなくなるんです。
いいことを教えてもらったなって。
言った本人、竹内君は
覚えてないんですけど(笑)





天然氷は食べた時、
キ~ンとこないっていうけど、
結局は氷の温度なんです。
「ふわふわ」っていうのは
カンナで薄く削って、その間に
空気がいっぱい入っている状態。
だからキ~ンこないんです。

板前さんと同じで、
刃は毎日研がなきゃいけない。
でも同じ刃を使ったとしても、
温度が低いと小さな氷の粒となって
落ちてくる。
それこそ氷がびしょびしょに濡れる
くらいの温度にしておくことが
大事なんです。
発泡の箱に入れて、
一日しまって置くくらいが
いいですね。 



氷のプロ 福島さんに聞く!
ふわふわ氷を作る3つの条件

・切れ味のいい刃
・氷の温度
・刃の高さの調整
 
 
 
 

純氷とともに 福島氷室