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インタビュー

葉画家・群馬直美さん(立川市羽衣町)いよいよイギリスへ! いってらっしゃい!!

2019年7月23日・24日・25日の3日間
同協会が主催する『RHSロンドン ボタニカルアートショー』で
いよいよ最新作『下仁田ネギの一生』のテンペラ画作品6点を世界に発表する!!

愛おしそうに立川の街並みを見つめる群馬直美さんを、JR立川駅の南口で見かけました。
伺うと、2019年7月23日から開催される『RHSロンドン ボタニカルアートショー』に向けて、ちょうど渡英の準備をしていたところとか…。
せっかくなので、渡英を目前に控えた群馬直美さんに、この度の出展に向けての苦労話を伺うと、いつもの笑顔で話してくれました。
群馬
今回発表する『下仁田ネギの一生』のテンペラ画作品6点を描いて、一番手間がかかったのは、実は下仁田ネギを描きあげる事よりも、その一つひとつに添えるキャプションだったんですよ(笑)
私の表現する言葉では、英国の人たちには伝わらない!って通訳の方に言われて、翻訳機を使いながら何度もなんども書き直しました。
結局4月からキャプションを英訳しはじめて、6月いっぱいかかっちゃいました(笑)


エキュート立川店の本屋さん「PAPER WALL エキュート立川店」のスポットコーナーに陳列されていた自らの著書「言の葉 葉っぱ暦(ことのは はっぱごよみ)」を見つけると、手に取り何かを確かめるようにページを送りはじめる。

自らの著書を見つけると、パラパラとめくりながら、描いた時の心境を語ってくれました。

群馬
これまで描いてきた作品を見返すと、そのひとつ一つに、当時の思い出や気持ちが蘇ってくるんです。
そうやって描きつづけて、今回の『RHSロンドン ボタニカルアートショー』に繋がってきたんだなって…。過去を振り返ることによって、改めて楽しんで来ようという気持ちが湧き上がってきました!

7月19日、いよいよイギリスに旅立つ群馬直美さん。
立川から世界へ向かう群馬さんの無事の帰国を祈りつつ

いってらっしゃい!

撮影協力:PAPER WALL エキュート立川店

2019年7月『RHSロンドン ボタニカルアートショー』に
最新作『下仁田ネギの一生』のテンペラ画の出展が決まった!
葉画家・群馬直美さんにうかがった

正確で繊細な描写が求められる『英国王立園芸協会』の厳しい選考基準に見事合格!
2019年7月23日・24日・25日の3日間、同協会が主催する『RHSロンドン ボタニカルアートショー』で、いよいよ最新作『下仁田ネギの一生』のテンペラ画作品6点を世界に発表する。

特別なものではなく、道端で見かける身近な草木の、葉っぱ一枚いちまい、綿毛一本いっぽんに真剣に向き合い、細密なタッチで描きあげた作品たち。
その、ありのままの姿は、あたかも永遠の命を与えられたかのように息づき、時の流れに動かされない普遍的な魅力にあふれている。

大学三年の文化祭で発表した作品『世界で一番美しいもの』。
小学生の思わぬひと言に打ちのめされ、創作活動がまったくできなくなった。
本当に美しいものを求め、苦悩する日々の中で出合った“新緑の輝き”
その時、葉画家・群馬直美が覚醒した。

群馬
会社勤めをするより、絵を描いてる方が良いかなって…。
自分のやる気次第でいつまででも描いていられるし、定年もないし(笑)


生涯の仕事をさらっと語る群馬直美さん。
群馬県高崎市出身。東京農業大学第二高等学校から東京造形大学を卒業して
立川市で作家活動をはじめた。

群馬
もの心ついた頃から絵を描くのが好きで、人を笑顔にすることも大好きだったから、
将来の夢は漫画家になること! それもギャグ漫画を描きたかったんです。
だけどギャグ漫画って、笑いのセンスも必要じゃないですか!
だから、私にはムリかなって…。


小、中学校は美術部で過ごし、高校では美術部の部員の多さが嫌で
写真部に所属する。その後、美大への進学をはたした。

群馬
父方の祖父は、木材を加工して工芸品のコケシや木のオモチャを作る職人でした。
バンビのおもちゃってわかりますか? 底の部分を押し込むと、ヘナヘナって崩れちゃうおもちゃ。
私は、いろんな木のおもちゃが作れる祖父と、祖父の工場に遊びに行くことが大好きでした。今日はこれ、今日はこれって、祖父のつくる木のおもちゃでよく遊びました。

一方、母方の祖父は、実家の近所で八百屋さんを営んでいたのですが、いつもボロボロの服を着てリヤカーで市場へ仕入れに行く姿を見かけては、子ども心に、なんか恥ずかしくて…、見てみぬ振りをしてしまった…。


葉画家・群馬直美の原点が垣間見られるようなエピソードだ。
そして東京造形大学に進学して、大好きな芸術の世界に没頭する日々を過ごしていた。
大学三年ともなれば作風は確立し、おもしろいようにアイデアが形になっていく。
その年の文化祭を終えて、アーティスト人生を左右する出来事が起こる。

群馬
音楽は音を聞いて、その場で拍手したり、身体を動かしたりと、すぐに反応があるじゃないですか! でもアート作品は、レスポンスにワンクッションあると常々感じていました。
頭を使わないと理解できないものでは無く、見てすぐ感動させられるもの、そこを大切に考え活動していました。


『世界で一番美しいもの』をテーマに、文化祭で発表する作品を手がけた。
立体の大きな女性のオブジェは、金網や麻袋を使って形をつくり、鉄粉や銅粉などを塗り込んで質感を出す。さらに、カラフルな目を無数につくり、オブジェ全体に装飾したものだった。

群馬
見た目ではなく、内面から溢れでる美しさ! そう、それは子どもの頃、恥ずかしさから見てみぬ振りをしてしまった、八百屋のおじいちゃんから感じていた美しさで、自分の中では最高にキテル作品だった!
同じ美大の同級生からも“夜、眠れなくなった”って言われて、私は、そんなに感動してくれたんだって、喜んでいました。
文化祭も終わり、『世界で一番美しいもの』を、自宅の軒下で保管していました。
数日後、大家さんと管理人のおばさんが我が家を訪ねてきたんです。
何事かと思ったら…、「裏の家に住んでいる小学生の兄弟が、このオブジェを見て怖がって泣いているから、なんとかして欲しい」と…。私は、文化祭で手ごたえを感じていただけに、その言葉に耳を疑いました。
自分の意識の中では、世界で一番美しいものができた! と意気揚々としていたのに、それを見て怖いと感じる人がいた…。
もしかして、眠れなくなったと言っていた同級生も、怖くて眠れなかったのかも知れない…。


これまで美しいと感じたものを、直感的に形に作り上げてきた群馬さんが、生まれて初めて、作品をつくることができなくなった。

群馬
あっ、これおもしろい! と思っても “本当にそうなのか?” という問いかけが自分の中ではじまり、まったく作品がつくれなくなりました。
そんな繰り返しにフラストレーションが溜まるばかりで、発散のためにジョギングをはじめました。
1ヵ月経ち、2ヵ月が経っても、まったく作れない状態から抜け出すことができなかった。
それから、3ヵ月が過ぎようとしていた頃、いつものようにジョギングに出ました。
季節も春になり、日差しもあたたかくなっていました。
何気なくふと空を見上げると、それまで枯れていた枝先に若葉が芽生えて、その葉が太陽に照らされて輝いて見えました。
その葉っぱを見て、“なんて美しいんだろ~”って…。
これまで、何度もなんども美しいと感じては、それを打ち消してきましたが、この“新緑の輝き”は、不思議なくらい心の奥底に染み入ってきました。
私が追い求めていた本当に美しいものは、これなんだ!

■■
奇しくも、コケシ職人だった祖父が携わっていた木の生命力によって、本当の美しさに気づかされた群馬さん。
この日、葉画家・群馬直美が覚醒した!


自分を覚醒させてくれた葉っぱたちの美しさを、どうやって表現したらいいのか、試行錯誤がはじまった。これまでの手のこんだ独創的な作風とはガラッと変えて、シンプルな作品づくりを意識した。

群馬
葉っぱの裏側を筆ペンで黒く塗って、スタンプのように紙に押す。
押した葉の葉脈の周りを1ミリくらい白く残して、あとは全部黒く塗りつぶすと、思いもよらない不思議な幾何学模様の作品ができあがり、好評でした。


“新緑の輝き”に気付かされてから、今までの時間を取り戻すかのように、作品づくりに没頭した。

群馬
私を救ってくれた葉っぱたちは、特別な草木ではなくて、足もとに咲いている身近なもの。その葉っぱの一枚いちまい、綿毛の一本いっぽんに、真剣に向き合い、描きつづけました。


そして、細密に描写する現在のスタイルにたどり着いた。
1998年には、初出版となるアート&エッセイ『木の葉の美術館』(世界文化社)を出版した。
群馬
振り返ると、この本が出たことで、人生の転機になったところもありますね。
出版を誰よりも喜んでくれた父は、私が実家に帰ると、「地元(群馬県)で展覧会を開いたらどうだ」って(笑) 母と私を連れて3人で、美術館を見て歩いたほどでした。
そのなかには、その日、その時の状況で、染め色が微妙に変化していく足もとの草木たちに分け入り、探求し続けながら草木染めを確立した、山崎青樹(やまざき せいじゅ)さんが、深くかかわっている「高崎市染料植物園」にも行きました。でも、こんな立派なところではできないよ…と意気消沈。家族3人、肩を落として帰ったこともありましたね…。


生まれ故郷の群馬県で開催したある展覧会で、思いがけない仕事の依頼。

群馬
母校(東京農業大学第二高等学校)の校舎を描く仕事だったんですけど、キャンバスに校舎だけ描くと校庭部分がスカスカで(笑)そこで閃いたのが、母校に受け継がれる伝統、大根踊りの “大根” を描こう!
描いてみると、身近な野菜のことなのに、意外と知らないことが多くて刺激的でした。
それと…、描きはじめたことで、子どもの頃のことが蘇ってきました。
リヤカーを引いて仕入れから帰ってくる祖父を、見てみぬ振りをしてしまったこと…。
その時、祖父の引くリヤカーを押せなかったお詫びの気持ちも込めて、野菜の絵を描きはじめました。

野菜を描きつづけていると、何かに導かれているかのように、故郷(群馬県)での仕事が増えた。

群馬
故郷で、野菜の絵の個展をした時に、特産品である下仁田ネギの原種が、今も一部の区域で守られ、栽培されていることを知りました。
もちろん下仁田ネギは、子どもの頃から知っていましたが、詳しくは知らなくて…。伝統農法で育てている、下仁田ネギ専門の農家さんの畑に一年通って、種採りから収穫までを体験させていただきました。


下仁田ネギは、下仁田以外の地域では味も生長もまったく別物といわれる。下仁田の土壌や気候で育てることで、特産品としての価値を保っている。

群馬
伝統農法で育つ下仁田ネギを知れば知るほど、これは私が描かなくてはいけないと感じました。
また、ちょうどそんな頃、両親の体調もすぐれなくなり、両親を喜ばすためにも、何かしてあげたいと思っていました。


自分のルーツである群馬県の特産品、下仁田ネギ。
組作品『下仁田ネギの一生』の制作にも熱が入って当然!
そして昨年(2018年)、群馬県高崎市の依頼で、展覧会を開催する機会にも恵まれた。
そこは…。

群馬
故郷での展覧会が決まって、何度か会場に足を運んでいるうちに、ハッとしました。
ここは20年前に、葉っぱの絵の展示会場を探して、両親と訪れた場所だ! あの時、あまりの格式の高さに、家族3人、肩を落として帰った日の光景が蘇りました。
"20年前に3人で見た夢が叶ったんだよ!" と両親に話すと、ふさぎがちな中にも、2人の表情が明るくなっていくのがわかりました。


そしてこの度の『RHSロンドン ボタニカルアートショー』への出展。
群馬さんにとって、どんな意味があったのか…。

群馬
両親のふさぎ込んでいる姿を見て、気づかされたんです。
やっぱり人間は、新しい風や新鮮な水を取り入れないといけないなって…、つくづく思いました。
それから3年の月日が流れて、『腐葉土の踊り』が生まれました。
実は私、絵と並行して身体表現の探求もしていて、展覧会でもパフォーマンスをすることがあるんです。

 落ち葉が大地に降り積もるように、
 私たちのからだの中にも
  “経験という名の落ち葉” が降り積もっています。
 楽しく嬉しい経験もあるけれど、
 心にかたくこびりついた辛い経験もあります。
 そんな “経験という名の落ち葉” をふかふかの腐葉土に変えて、
 自分の中に、みんなの中に、
 新しい芽を芽吹かせよう!

そんな踊りなんです。


“新緑の輝き”からたどりきた道。

群馬
いつも応援してくれた両親に、私が新しい世界にチャレンジする姿を見せることで、元気になってもらいたい事もありますが、これまで、立川で培った私のすべてを込めて、自分のルーツである下仁田ネギを描きました! それを、『RHSロンドン ボタニカルアートショー』で発表することで、世界の人たちの心に、新しい風を届けたいと思っています。
私の中にも、みんなの中にも、そして、父と母の心の中にも、新しい芽が続々と芽吹いたらいいな…、と。

■■
立川から世界へ。
葉画家・群馬直美さんの新たな歴史が動きはじめた!


by ノックアウト♪

群馬直美さんのダンスパフォーマンス!

ネギに捧ぐ和太鼓とダンス(高井 空 氏 撮影・編集)


ネギに捧ぐ和太鼓とダンスversion2(永尾 東 氏 撮影・編集)

木の葉の美術館 群馬直美 公式ホームページ

https://wood.jp/konoha/

葉画家・群馬直美 公認ファンページ

■群馬直美 プロフィール

群馬県高崎市生まれ
東京造形大学 絵画科卒
大学在学中より、これまでの作品から方針転換、“誰にでも描ける葉っぱ”をテーマに活動をはじめる。1991年より、緻密な描写ができる現在の手法が完成する

【著書】
『木の葉の美術館』『木の実の宝石箱』『街路樹 葉っぱの詩』『群馬直美の木の葉と木の実の美術館』(世界文化社)
『言の葉 葉っぱ暦』(けやき出版)など

【ワークショップ】
『世田谷美術館世田谷大学』2008年より、年間60名・全12回で開催中
『葉っぱ研究会』2010年より、年6回ペースで開催中

【連載・掲載】
■株式会社ヤマト(群馬県前橋市)
 ★月刊紙『ヤマトネイチャーサークル』
 ★WEBページ『ヤマトネイチャーサークル
■一般社団法人 公園財団(東京都文京区)
 ★公園文化WEB『葉画家 群馬直美さんのアートコラム