インタビュー

達人フレーマーここにあり!額縁専門店 PRIMEVERE 梶原哲也さん

'[画像]アキレスと亀のちらし'

2008年8月、「第65回ベネチア国際映画祭」コンペティション部門に正式出品、絶賛された映画〈アキレスと亀〉(監督・脚本・編集 北野武、主演 ビートたけし)。”画家になる”夢をもっていた真知寿(まちす)の物語。この映画の大事なアイテム、60余点の絵画フレーミングを担当したのが、この人、梶原哲也さん--プロの技が脇を固めた。

'[画像]アキレスと亀'
(C) 2008 『アキレスと亀』製作委員会
9月20日(土)、テアトル新宿ほか全国ロードショー
シネマシティにて上映中
配給:東京テアトル/オフィス北野
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羽衣町にある額縁専門店 PRIMEVERE(プリムベール)。パリ、モンマルトルの丘を思わせるような風情のある店構え。フレーミング コーディネーター 梶原哲也さんのお店だ。お客様の心になって、作品の魅力をさらに引き出す。その評判は広く伝わり、先頃オフィス北野から映画〈アキレスと亀〉作品中に使われる絵画の額装を頼まれた。その数、約60点。台本を渡され、1点ずつ映画の重要アイテムとしての位置を説明される。時代考証をし、作品と背景にある大道具との関わりを考え、それに応える。黒子に徹しないとできない仕事だ。

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「時給に換算したら、ファストフードでアルバイトした方が割がいいですよ」と笑う。そのくらい手間と時間がかかる仕事だ。それでも依頼主の希望を最大限かなえてあげたい。既成の額では納めきれない思いを「価値」と考え、一緒になって思いを遂げる。

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葉画家・群馬直美さんの個展でも額装を頼まれた。街路樹という切り口の作品に、額も並木道のイメージで並べた。群馬さんの希望にそって、幹を思わせる木製のフレームを、緑を引き立たせる白で塗った。

絵だけではない。時には立体的なものもフレーミング。幼い頃使ったトウシューズ。最初に買ってもらったヴァイオリン。紙芝居の箱や戸棚のようなものも作る。作品を一番きれいに見せるためなら、いろいろなことを考える。そこが楽しい。損得抜きの感情だ。

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依頼主と話すところに全ては始まる。最近はインターネットでの注文も増えたが、話せばもっと理解し合える。小学1年の子どもが描いた自画像を持ち込まれた。簡単な既成の額にマットもなしに入れてあったが、入れ替えたいという話。「額に入れてあげるというだけ、まだいいですよ」と言いながら、いくつかのサンプルを出す。アーリーアメリカン調。ポップな感じの明るい感じ。まさに肖像画というイメージのデコラティブな額。それに合わせてマットを選ぶ。決まったらフレームを組み、角の隙間を埋める。立体的に見せるために木材を継ぎ足したり、マットに装飾したり。一緒に働くのは梶原環さん。マッティングの専門家だ。彼女の手にかかると、作品が額にスッと吸い込まれる。

額装された娘の絵に、感心しきりの依頼主。「まだまだ勉強中です」と言う梶原さんの一番うれしい瞬間だ。

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名称 PRIMEVERE
所在地 立川市羽衣町1-18-8
TEL 042-528-6789
営業時間 10:00~ 19:00
定休日 日曜日