インタビュー

ZOOではたらく青年たち
今日も、明日も ― 大好きな動物たちのために多摩動物公園

今年、開園55周年を迎えた多摩動物公園。
年間、約95万人が訪れる園内で飼育、獣医、企画広報など
様々な仕事に携わる5人の方にお話を伺うことが出来た。
その平均年齢31才。日本の動物園の未来は明るい。

動物が最後まで、その使命を全うできるように。

廣瀬さん(40才)
岐阜県出身。養鶏場にヒヨコを卸す企業で5年間勤務。後、上野動物園でゴリラ、トラ、ライオン、テナガザル、オランウータンなどの飼育を5年。多摩動物公園では、トキをはじめ鳥の孵化育雛を6年、チンパンジーを担当し2年になる。
[My pet] 現在は飼っていない

後輩達を見ていても、とにかく動物が好き、
愛着を持ってここ(動物園)で仕事をしているな
という人がほとんど。

私の場合、過去にヒヨコを養鶏場に卸す仕事をしていたせいか、
ただ動物が好きで、というのとはちょっと違う。

「好きだから」というより、いかにうまく「管理」して
その動物が持つ使命を全うさせてあげられるかを考えています。
それが動物たちにとっても、一番幸せなことだと思うから。
動物園の動物はお客さんに見てもらい、
喜んでいただくのが使命の一つ。
それにはやっぱり健康でなくちゃいけないし、
メタボにもしたくない。

その点、家で飼ってる動物は
やっぱり「家族」だから、太り気味だったり。
もっとちゃんと管理していたら、
愛猫ももう少し長生きしたかも、と(笑)

自分は出来ると思ったら、そこで成長が止まってしまう。

チンパンジーのようにしっかりしていて
長生き出来たり、大人になっている
動物を飼うのはまだいいんです。
動物は一生涯の中で、
生まれてすぐの状態が一番弱い。
鳥の卵を機械で孵す時は失敗しないように、
それは神経を遣います。
私が親代わりですべてを背負っているから。
自分は出来ない飼育係、いつも何か足りない
と思って仕事をしています。

今、飼っているのはチンパンジーですが、
私は人間だからチンパンジーの気持ちはわからない。
ということは、どんなに頑張っても
100%の管理は出来ないってことなんです。

動物園には、私より出来る飼育係の人は沢山いて、
ああそんなところを見てたのか、
そんなところにも気付けるのか、と。
また、そういう人がここにいることに安心させられる。

動物の生態を学んだり、基礎はもちろん大事。
でも知識ばかり増やしてもしょうがない。

やっぱりセンスというか、
客観的に動物を見て、何に気付くか。
出来る人たちに追いつくためには、
技術を高めていくしかない。

気をつけていること?
鍵をかけ忘れないこと。
離れて10年も経つのに、
トラやライオンが逃げ出す夢を未だに見ます。
もちろんチンパンジーも(笑)

いちばん長く接している飼育員が、最初に気付かなければ。

高津さん(30才)
岡山県出身。上野動物園でキリン・フラミンゴの飼育を4年、飼料担当を1年経験後、多摩動物公園へ。今年4月から、ユキヒョウとレッサーパンダの飼育を行っている。
[My pet] ウサギ・デグー・ハツカネズミ

動物園は子供の頃の思い出。
大学の授業で久しぶりに行った時は「広っ!」(笑)
動物が好きで面白いだろうなって思っていたけど、
いざ入って動物を任されると、プレッシャーがすごくて。
異変に気付かず手遅れになったらどうしよう、そればっかり。
休みの日は基本、精神力、体力の回復でした。もうグターッと(笑)

最初はきつかったですね。今もまだまだコワい。
飼育する動物の症状を、
もっと真剣にとらえられていたら手遅れにならなかったかも、
という苦い経験もあります。
申し訳ない気持ちと、
今もこの仕事を続けられていることが本当に有り難い。

日本の、そして世界の動物たちのために。
自分は今、何をしたらいいんだろうと、
少しずつ考えられるようになってきました。
先輩の話を聞いたりして、目の前の事だけじゃダメなんだなと。
もっと海外にも目を向けて、自分の経験を活かしたい。

「次の人が、自分よりもうまく飼えるように引き継げ」

多摩動物公園提供

どの動物も飼育すると好きになるんです。
今までフラミンゴなど、鳥に興味がなかった。
でも担当してみるとすごくおもしろい。

鳥は1年間できっちりサイクルが出来あがっているので、うまく当てはまると結果がすぐにわかる。
前任者の方の結果が出始めていた頃、私が担当に。
引き継いで同じようにそのまねをしていると、
おもしろいように結果がついてきた。

前任者の方がされてきた仕事を、
きちんと引き継がせてもらえたことで
結果につながったんです。

自分だけが上手に飼えても意味がない。
担当者が変わるとまた一から…では、時間の無駄ですよね。

先輩から頂いた、自分の中の格言があるんです。
「次の人が自分よりもうまく飼えるように引き継げ」。

本当にそうだなって。
こういう気持ちをみんなが持っていれば、この多摩も上野も、地方、日本… 動物園自体が
レベルアップしていくと思う。
私も、後輩の人達に、この言葉を贈ります(笑)

虫の面白さや能力を伝えられた時の喜びは特別

田中さん(31才)
千葉県出身。大学では昆虫や生物の研究を出来る専門分野に進み、生態学、動物行動学を学ぶ。大学院修了後、多摩動物公園へ。チョウの飼育1年、バッタ類の飼育を担当し2年目。博士(理学)
[My pet] 熱帯魚・水草・パンダマウス

小学校の時から虫が好きで、
研究者とか博物館で働く道は考えたりしました。
でも動物園の職員になるとは…。

昆虫好きにも色々あって、どこに興味を持つかで全然違う。
虫の形がカッコいい、キレイ、
またコレクション的に好きという人もいるけれど、僕の場合、
虫がどうやって生きているかというところに興味があります。

人とは全く違う姿かたちをしている虫。でも心臓もある。
ヘンな動きをしても、虫には虫なりの理由があってしていること。
今飼っている個体数も多いバッタを、
うまく育てることが出来るとうれしい。
虫の持つ面白さや能力を伝えられた時、
うまく飼う喜びとは全く違うものがある。

虫嫌いな子も多いけれど、園のイベントで実際に虫に触って、
何回目かに好きになったと言ってもらえると、
飼育員をやっていてよかったと思う。
この喜びは動物園でないと味わえないです。

人も虫も、生きる意味がある。

多摩動物公園提供

虫の命は短いけれど、彼らの虫生の中で凝縮した時間を生きているので、儚いとは思いません。
命の強さを感じる一方、その小ささ、弱さも感じます。
トノサマバッタって、小さいケースに200匹くらい入れていても、環境に合わせて変化して育つんです。
相変異っていうんですけど。

強いと思っていると、梅雨の時期など、
ポロッと突然死んでしまうこともある。
結局、育て方次第。
うまくいかない時は、自分が何かバッタにとって
よくない飼い方をしたんだなと。

どこがダメだったのかを考えて、
次の仕事にちゃんと活かしたいと思います。

ここは動物園の中の昆虫園なので、虫を見に来ていない人も多いんです。
でもそれは色々な人に虫の魅力を伝えていけるチャンスだと。
虫が嫌いと言われるのも、身近だから。
人間に近すぎる時に害虫扱いされたりもする。
飼うことで見えてくる面白さも、きっとあると思います。
こうやったら生きる、こうなると死ぬんだ…と。
人も虫も生きる意味があると、僕は思っています。

動物のために勉強しなくちゃ。死に立ちあうと、強く思う。

太田さん(獣医)27才
東京都出身。幼稚園~中学生までの9年間をカリフォルニアで生活。獣医大学では、犬猫、鳥、牛馬などの家畜を学ぶ。卒業後、町の犬猫動物病院で半年勤務。多摩動物公園に勤務して3年目。

欲しいものは洞察力、見抜く力、観察力、話を聴く力。
動物は話せませんから。
想像力もいるけれど、理由を考える時に沢山の知識がないと結びつけられない。奥が深いです。

小さい頃から野生動物が好き。動物園にもよく行きましたね。
レンジャーや、動物を保護したり、治療したりする人の姿を見て、私も動物と一緒に何かしたい、そんな気持ちを持っていました。
動物園に実習に行くと、そこで働く人々が輝いて見えて。

実際なってみると、頭を抱えることは沢山あります。
簡単に検査が出来なかったり、症状はないけど調子が良くない動物に何をしてあげたらいいのか。

基本的に、動物は症状を隠していることも多いんです。
治療が逆にストレスになる。そのリスクを冒しても診るのか。
4名の獣医がチームとなって、必死で考えて答えを出します。
同じ獣医でも、女性と男性とでは動物の反応も違うんです。
動物の反応に対し、獣医も色々工夫して。

動物が死んでしまった時には解剖をします。
剖検所見というんですが、目の前にあるものを客観的に、科学的に見て、飼育係の方に生前の状態を聞いて、総合的に死因を究明します。

無力さを感じること…ありますね。
もっと立派な獣医にならないと。

飼育係の方に信頼される人になりたい

治療も観察も、日々、その動物を見られている飼育係の方の話をじっくり聞いて、常に一緒に。
飼育係の方から教えて頂くことは多いです。
私たちも提供できる技術や情報を伝えて、お互い動物のためになることを考えています。
動物園の場合、過去に症例がないということも沢山ある。
そういう時は、飼育係の方から、昔はこうだったというお話を聞いたり、蓄積されているカルテを頼りに探ったり。
大目標は、どんな動物でも診られる獣医になること。 そして飼育係の方に信頼される人になりたいです。

五感を使って楽しめるのが魅力。より体感できる動物園に。

徳田さん(26才)
東京都出身。大学時代は、獣医保健看護学科で学ぶ。多摩動物公園でボルネオオランウータン・シロテテナガザル・ハクビシンの飼育を2年担当した後、教育普及係に移動、2年目。飼育の経験も活かした、新しい企画・展示に意欲的。

動物はカッコいい。みんな堂々としていて。
それぞれが持つ能力を発揮する瞬間を見た時、ますます動物が好きになる。

能力の高さや迫力、器用さ、
動物のありのままを伝えたくて動物園に。

どうしたらこのすごさが伝わる見せ方が出来るか、
それが一番興味のあるところ。
頭の隅で、いつもずっと考えています。
ある時、先輩から
「アイデアは楽しいところから生まれる。
だから楽しみながら仕事をしなさい」
と言われて、何かが変わった。

それからは仲間と楽しく、アイデアをポンポン出し合って。
ただ受け身に見る動物園から脱却したものにしたいんです。
小さい子がモルモットを見にやって来て一言「クサッ !」。
それでいい。
逆に「よく気づいたね~」ってほめてあげたい。
匂いは近くないと感じられないし、鳴き声もやはり近くないと。
ライオンやトラ、動物たちの怖さももっと体感してほしい。
そして「あの子、元気かな?」って、親戚にでも会いに行く気分で動物園にきてほしい。

飼育サイドと来園者をつなげることをしたい

飼育を経験することで、
その動物の魅力に改めて気づいたり、また育てる難しさも…。

忘れられないことがあるんです。
シャイなオランウータンがいて、なかなか運動場に出たがらない。
どうしたら運動場を好きになってもらえるか。
何が好きかなと考え、餌を隠して運動場を楽しいものと思わせたりして、試行錯誤の連続でした。
ある日、そのオランウータンがお客さんにちゃんと顔を見せて、それもやわらか~い表情をしていたんです。
動物もリラックスしてるし、お客さんもその様子を見て下さっているという夢のような光景に「やったー!」って。

飼育係の想いなども伝えながら、今の部署と飼育係を行ったりきたりして能力を高めていきたいと思っています。

どこの動物園も一緒というのはイヤ。
地域性やそこにいる人の個性が現れていたり…。今後どんどん独自の展示が出てくると思います。
この動物園だけが頑張っているというのではなく、相乗効果で全国的に盛り上がっていけばいいなと。
動物を見ると、みんな笑顔になりますからね(笑)