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インタビュー

選ばれる街『立川』へ
ルミネの屋上で あそんで まなんで 街とつながる株式会社 リライト(クリエイティブ ディレクター) 酒井博基氏

ルミネ立川屋上庭園で行われる
「あおぞらガーデン」を通じて、
実現を目指す地域と商業施設の
新しい関係とは?

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株式会社 リライト(クリエイティブ ディレクター)酒井博基さん

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酒井博基さん

株式会社 リライト
(クリエイティブ ディレクター)
1977年和歌山県生まれ。2002年武蔵野美術大学大学院修了。国分寺在住。クライアント企業向けに、クリエイターの枠を超え、コンセプト段階から、プロジェクトに関わり、クリエイティブディレクション全般を手掛けるなど、企業や、ブランドのマーケティング価値を最大化することを心がける。一方で、また食育や地域活性化などソーシャルデザインプロジェクトも自身で仕掛けるなど、幅広く活動。2010年「キッズデザイン賞」をはじめ、受賞歴多数

編集部

「あおぞらガーデン」は昨年から始まった取組みだそうですね。

酒井

当初はこれまでにない取組みだったので、お客さんに来ていただけるかという不安がありました。
でも昨年は予想を超える来場者様にお越しいただくことができました。今年は、目標だった来場者目標の千人を2日間ともに超えると予想しています。

編集部

この屋上空間に千人はすごいですね。昨年とはどこが違うのでしょう?

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酒井

昨年は6月から10月まで約5ヶ月間、ルミネ立川店の30周年を記念し、「ルミネの屋上で街とつながる」をテーマにしたイベントを行いました。
今年は春、夏、秋の開催でそれぞれに異なるテーマを設け、イベントと連動したマガジンの発行を行っています。

編集部

テーマが変われば出店者もターゲットも変わるのですか?

酒井

お客様のターゲットは変わりません。
テーマが変わっても、3回に共通するコンセプトは変わりませんので。お客様には、季節に合わせたテーマそれぞれの楽しみ方をして欲しいと思っています。

編集部

こうして屋上に来てみると、来場者の皆さんには共通した特徴があるように思われますね。

酒井

そうですね。
20代後半から30代にかけての子育て世代が中心です。

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編集部

母子だけではなく、
お父さんも一緒というのが特徴ではないかと思います。

酒井

そうかもしれませんね。

編集部

家族を大切にする、小さな幸せをとても大事に思っている人たち、ということなんでしょうか。

酒井

それ以外に特徴的なのは、情報感度が高い方々ということではないかなと思います。
これまでにない新しい取組みに対して、とても情報感度の高い人たちにお越しいただいているという実感があります。我々としても、特に来場者の方に新しい発見がある出店者のセレクトを心がけています。
結果的に情報感度の高い方というのは皆さん、お母さんになってもお父さんになってもやっぱり“オシャレ”をしていたい、という気持ちの強い方々なのではないかなと思います。
ルミネ立川さんとの相性もすごく良いのではないでしょうか。

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編集部

出店者は結果的にいかがでしたか?

酒井

皆さん予想以上に取組みのコンセプトと相性がよかったと思います。出店者同士の交流もあって、いいチームなのではと感じます。
ルミネ立川店さんのテナントの中では、オリオン書房さんにも協力いただいています。あおぞらの下大人も子どもも楽しめる絵本というコンセプトでブックセレクトしていただいています。我々としても「あおぞらガーデン」を単なるルミネ立川店の販促活動の延長と見られてしまうイベントにはしたくなかった。コンセプトをご理解いただけそうなお店に我々からご協力をお願いするという形で関わっていただいています。

編集部

お客様の屋上滞在時間はどのくらいですか?

酒井

中には数時間いらっしゃる方も少なくありません。
マルシェでお買い物も楽しむことができて、体験型ワークショップもできる。また館内でのお買い物の合間にコーヒーを楽しむこともできる。
でもコンテンツがてんこ盛りかというとそうではない。
コンテンツはすべて縁の方に寄せています。
会場となる屋上の主役は、ハンモックであったりレジャーシートであったり。各々がそれぞれの時間を楽しむ風景そのものがメインのコンテンツだと考えています。
商業施設にこうした空間があることが非常に重要なんじゃないかなと思います。

編集部

昔はデパートの屋上ってなんか特別な場所でしたよね。

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酒井

僕にとっても特別な場所でした。
デパートは“ハレの日”というイメージがあって、その中でもデパートの屋上は記憶に残っている風景です。
そんなデパートへの憧れをすごく意識していて、現代版の新しいエンターテイメント空間にしたいと思いました。
ただ、時代も変わってエンターテイメントの意味が変わりつつあります。お父さんはコーヒーを飲んで読書してたり、子どもはシャボン玉のそばを走り回っていたり、お母さんはマルシェでお買い物を楽しむ。そんな日常的にありそうでない体験という意味では、非日常体験なのかもしれません。

編集部

シャボン玉は重要なアイテムでしょうか?

酒井

シャボン玉によって空間に立体感が出ると思います。
視覚的なBGMと捉えることもできるかもしれません。
他のコンテンツを邪魔しない程度に空間のアクセントになっています。

編集部

大人もシャボン玉が飛んでいると、
シンボパンやクルミドコーヒーの行列が苦でなくなりますね(笑)。

酒井

なるほど、そうかもしれませんね(笑)。

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編集部

マガジン「AOZORA Garden」は電子書籍版をネットで観ることができます。でも紙媒体も出していらっしゃる。この世代はネットで充分対応できると思いますが、紙媒体を作ったのはなぜですか?

酒井

インターネットによるインフォメーションは、どんどん流れていってストックされません。また単に一方的に情報を発信するだけでは意味がないと思っています。ルミネ立川店さんが一時的に集客を目指すイベントではなく、みんなにこのエリアを好きになってもらったり、たくさんいい思い出を作ってもらいたい。そのためには、オフライン(体験型)コミュニケーションが重要になると考えており、屋上での非日常体験をどうオンラインと組み合わせていくかということを考えました。

マガジンを手に取った人に、はけの朝市に行ってみようかな、シンボパンに行ってみようかなと思ってもらえるといいなと思います。マガジンを通じたコミュニケーションと言いますか、触媒にはなるのではないかと思っています。

編集部

特にシンボパンはこの取組みのコンセプトにはまっていますね。

酒井

立川は、大きな見どころはたくさんあるけれど、小さな見どころが育って行くカルチャーがまだないと感じていて、そんな中で、こういったカルチャーを楽しむ人を増やしていきたいという狙いがあります。若干大きな話になるかもしれませんが、ここ10年くらいで立川が商業地として発展するにつれ、立川で手に入らないものは少なくなっている一方、立川でしか手に入らないものも失われつつあるんじゃないかと思っています。

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その意味するところは、立川に来てもデッキを降りない、IKEAに来ても、ららぽーとに来ても、街を回遊しない。つまり立川に来ていても立川に来ていることにならないということなんです。

僕らは「あおぞらガーデン」の出店者を通して、街の小さな見どころを取り上げ、その魅力を伝えることで街に新たな回遊性を生み出したいと思っています。マガジンもその仕掛けの1つです。小さな見どころは、単体での発信は難しい。今後、ルミネ立川店さん自身が、これまでにない新しい地域メディアになる可能性があると思うんです。もっともっと多くの人に街の小さな見どころの魅力を知ってもらうためにも、ルミネ立川店さんの持つポテンシャルを活かして、我々は地域と企業をつなぐ役割を担えればと思っています。

ルミネ立川店さん自身も、駅という立地で商売する商業施設として、地域との共存共栄という課題をあらためて考えていかなければならない岐路に立っています。みんなで立川を盛り上げる。そうなっていかないと今後立川が“選ばれる街”にはならないのではないかと思っています。

※インタビューは2013年5月4日(土)、春の「あおぞらガーデン」初日でした。
5日(日)にはライブ演奏もあり、お天気にも恵まれて
2日間とも目標来場者数千人を超えたそうです。