インタビュー

集まりつなぐ、ネット『生涯学習』『知の木々舎』 代表 横幕玲子氏

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『知の木々舎』がブログを始めて
5年目に入るそうだ。

『知の木々舎』で検索すると、
40ほどの記事のもくじが出てくる。

もちろんそれぞれにURLがついている。

月2回発行、異色のネットマガジン。

今までに掲載された記事は約3000。

総アクセス数は108万にもなった。

ブログは実質1人で運営している。

横幕玲子さん、その思いとは?

横幕玲子さん … 愛媛県出身。津田塾大学を卒業後、愛媛に戻り高校教師を経て結婚。以来、専業主婦になり、奥ゆかしくできた妻、完璧な母であることに専念。しかし、元々持っていた向上心、向学心、好奇心が「人と人をつなぐ」ことへの関心として芽吹き、生協などの市民活動、公民館運営審議委員としての経験を栄養として、誰も踏み込んだことのない領域、ネット生涯学習『知の木々舎』として開花した。1945年生まれ。立川市在住。

編集部

猫、飼ってらっしゃるんですか?

横幕

そうなの。壁、引っ掻いちゃってすごいでしょう?
エイジって言うの。栄町二丁目で生まれたからエイジ(笑)。

編集部

横幕さんは市民交流大学に関わってらしたんですよね?

横幕

そう。1年だけ。
公民館から学習館に移行する時、当時はどこの自治体も「生涯学習」に一生懸命だった。市民が気軽にという理念はすばらしいんだけれども、市民交流大学には場所や時間など制約が多くて限界があると感じたんです。

編集部

それでネットを?

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横幕

そうなんです。時間も空間も自由で、少々テーマが堅くて一定のレベルを保った内容をと考えて始めてみました。
そうしたら、それをネットで見つけてくれて、すぐ理解してくれた人がいたの。フリージャーナリスト 加藤 仁さん。
『知の木々舎』の構想を話したら、「形を変えた生涯学習を提案している」と『本当の時代』というマンスリーマガジンに紹介してくださった。その年の暮れに亡くなったんだけれど、当時まだまだヨチヨチ歩きだったから、もう少し見守ってほしかったですね。もう一人、若い人で、理解してくれた人がいたのよ。テキメンさん!

編集部

ああ、国語研に招聘留学生で来ていたアイシェヌール・テキメンさん。

横幕

形を変えた生涯学習ということを面白がってくれたのね。
でもお会いできた日が、ちょうどトルコに帰る前日で、残念だった。

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編集部

『知の木々舎』のブログは今年何年になるんですか?

横幕

『知の木々舎』ができて5年。ブログは1年後に始めたので4年前。
こんなに続くとは思っていなかった。だってね、始めの頃は本当に大変だったの。少しいじると機械が動かなくなる。蹴飛ばしたかった。
今ね、もう80歳になるけれど、パリで現役ジャーナリストとして活躍している嘉野ミサワさんがね、当時の私と同じ思いをしているの。彼女が「この1週間インターネットがつながらなかった」とか「打った字と違うのがでてくる」とかメールしてくると、彼女の気持ちがよくわかるの、ああ、格闘してるなって。

編集部

でも横幕さんはすごいですよ。ブログをここまで駆使してらして。

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横幕

元々がメカに弱いオバサンだから最初は大変だった。
プロバイダーの「ブログを作ろう」というページから、テンプレートをひっぱってきたり、基本設定の指示に従って、ああでもない、こうでもないって、失敗しながら憶えたの。ブログ自体に制約があって、レイアウトは思うようにはいかないけど、まあ、何とか今の状態でおちついています。

編集部

熱意がすばらしいです。

横幕

大学卒業して愛媛に戻ったでしょ。仕事を持ってそれに燃焼するエネルギ―があったにもかかわらず、その後はそれらがブツブツと途切れてしまうことになった。親と喧嘩してでも自分のやりたいことを通す甲斐性もなくて、縁があって結婚し子供を3人持った。
夫は今では考えられないくらい亭主関白で、若い人が「夫が家事をしない」とか「育児を手伝ってくれない」とか言うでしょう? 何甘えているのとつい思ってしまう。子供が病気だったり苦手な主婦業を完璧にこなそうとすると若いときの夢なんか全部捨てなきゃいけないと思いこんでいた。

実はそうじゃないんだなって最近わかったの。田舎に引っ込んだり専業主婦になったりして、編集という若いころやりたかった仕事はできずに来たけど、今こうしてやっているでしょう?
思ったことはどこかで叶う。思わなかったことは叶わないけど、思ったことはいつか叶うんだと心の底から思う。若い人の中にはいろいろな事情で実現していないこともあるだろうけど、思いはいつか叶いますよ。

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編集部

本当に楽しそうですよね。

横幕

執筆者を探すでしょ?
興味のある方を見つけると資料を送ってアポをとるの。
その時のワクワク感。ドキドキするの、わかるでしょう?

編集部

ええ。ドキドキしますよね。私は仕事ですが。

横幕

私は仕事じゃないから、丸々ワクワク感です。
自分の興味だからちょっと偏向しているかもしれないけれど。でも、読んでみるといろんな人、いるでしょう?
『知』はいろんな『知』があると思うから。

編集部

そうですね。有名人も多い。
どうやって探すんですか?

横幕

ツテやネットで。この人面白そうって思ったら、資料送るんです。
ツテで紹介された方にも必ず資料は送ります。図書館を検索して著書があれば読んで会いに行く。
時流で探すこともあるんですよ。一昨年は安保50年なので、何かないかと探している内に早稲田の森川知義先生に「60年安保 6人の証言」があるのを見つけて転載をお願いしました。

編集部

えくてびあんもオバさんがやってますが、オバさんの強みってありますよね(笑)

横幕

あります、あります。
私ね、ずっと奥ゆかしく振る舞ってきたの。でも、この歳になったらそんな必要まったくない。お願いしてふられることもいっぱいあるけど、めげない。
中曽根(康弘)さんにお会いした時、オバさんのブログに掲載されることに「光栄です」っておっしゃった。30分の間に3回も! 草の根メデイアに成長したと話したら、あの方も政治家になった若い頃「草の根民主主義」を提唱されていたので、「草の根」ですっかり意気投合した。それがすごく面白かった。

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編集部

面白いでしょうねえ。このブログの目的は、「つなぐ」っていうことなんですよね。

横幕

そう! 今、『知の木々舎』の月刊読者は12,000人くらい。
その見えない読者とつながっている。高齢の執筆者も多いけど、読者はちょっと若いから異なる世代をつないでもいる。お金になるわけではないからどこまでも自己満足よ。でも楽しい。若い人にはワクワクしますよね。年配者だってワクワクする。誰も傷つけないし、誰のじゃまにもならない。

編集部

生き甲斐ですよね、もう。

横幕

仕事としてやったらこうはいかなかったかもしれない。
若い時は自分で限界を作っていたけれど、今は限界を作る必要がない。オバさんだから(笑)。
思えば親とも喧嘩できなかったし、主人を捨てても行けなかったし、自分が我慢することで丸く収めようとしてきた半生だった気がする。
今はみんなが楽しい思いをしながらその中に我慢をしない自分がいるでしょう?それがとっても楽しい。

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編集部

ご主人様がいらしたら、きっとビックリなさっているでしょうね。

横幕

そうよ。主人は私にこんなことができるなんて全く知らないで亡くなったから。子どもたちだって知らない。親のブログなんか見てる暇もないから(笑)。

編集部

あ、エイジ君、戻ってきましたよ。

横幕

エイジは3匹目の猫で、3匹も飼ったら今度こそうまく育てられるだろうと思ったのが甘かった。
実はね、エイジは耳が聞こえないの。暴れてものを落としても聞こえないから平気。甘え下手でひざになんか乗ってこない。人間と同じで猫もいろいろね。
8キロもある大猫が走り回るから家の中はもう大変。でも、家ってきれいに住むことよりも暮らして汚れてなんぼだと思うようになった。この歳で会得した事は一杯あるの。

編集部

横幕さんのこれからが知りたいです。

横幕

これまで通り、身の丈にあった発信を続けていきたいと思っています。
陽気に、真摯に、グローカルに。

『知の木々舎』代表・横幕玲子が作るネットマガジン
http://chinokigi.blog.so-net.ne.jp