インタビュー

立川の未来
立川の北と南の顔で話そう趣味の呉服 丸屋本店 代表取締役 伊藤良三氏
株式会社 中晋 代表取締役 中里晋氏

趣味の呉服 丸屋本店 代表取締役 伊藤 良三氏
株式会社 中晋 代表取締役 中里 晋氏

北と南の呉服屋さん。

立川市商店街振興組合連合会の
理事長と副理事長が、
刻々と変化する
立川の商売を語ります。

さて、
どんな未来が見えてきますか?

''
''
伊藤良三さん
趣味の呉服 丸屋本店 代表取締役
立川村十二景に描かれている丸屋は強制疎開で現在のビックカメラの辺りに移動。そこで育ち、商売を覚えたそう。最近片付けものをしていてお姉さんの母子手帳を発見。自分には姉がいて、姉が生まれていれば自分はこの世にいなかったんだな‥と思わされたのだとか。立川市商店街振興組合連合会理事長。
''
中里 晋さん
株式会社 中晋 代表取締役
『ほっとすぺーす 中屋』は大正11年創業の呉服屋さん。強制疎開で北口から南口に移りました。ご自分の育って来た環境への反動か、お子様たちのために夏休みなどはたっぷりとって一緒に遊んできた良きお父さんでもあります。立川市商店街振興組合連合会副理事長(立川南口商店街連合会会長)。

編集部

丸屋さんは創業何年を迎えられたのですか?

伊藤

うちは明治33年創業だから、今年113年目に入りましたね。

中里

ちょうど1代違うんですよ。
私の祖父が、丸屋さん初代の時に奉公に行った。だから伊藤さんが4代目、私が3代目。

編集部

昔は家まで呉服屋さんに来てもらうのが普通でしたよね?

伊藤

修行から帰って来て、しばらくはそういう外回りっていうのがあったけれど、
今はなくなっちゃったね。

中里

修業先で「床の間を背にして商売できるのは呉服屋だけだ」って言われたのは忘れもしない。

伊藤

酒屋さんも米屋さんもクリーニング屋さんも、勝手口からだけど、
呉服屋は招かれて玄関から入って、床の間を背にするんだから。

中里

最近はお客さんの層も極端から極端になってきましたね。
店に入って来てすぐ「あ、これ川越唐棧ね、あるんだ~」なんて言う人もいれば、着物の常識を知らないで自由な着方をする人もいますよ。慣習だ、常識だなんて一切言わないですけど。

伊藤

私も言わないでしょうねえ。
ただ、お客さんに聞かれた時には正しいことをお伝えします。
甥の結婚式に小紋で出たいという場合は、甥っ子さんなら普通は留袖か色留ですよって。
そういう話をしておかないと、小紋でもいいとあの呉服屋が言ったとかいうことになるでしょ。

''
伊藤良三さん

中里

まったくそう。聞かれたら慣習、習慣、ルールを伝える。
正装っていうのは未婚なら振袖、既婚なら紋付に裾模様って。
それを紬でもいいなんて言っちゃあね。

伊藤

でも言っちゃう店もあるみたい。

中里

そりゃいいかげんなこという所もあるよ(笑)。

伊藤

売らんがためにね(笑)。
呉服の話ばかりで恐縮だけど、今は街なかから染物屋が消えちゃって、当初はうちでご購入いただいたものはしみ抜き、染めかえでも寸法直しでもしますよっていうことだったんだけど、よそで買われたものも引き受けざるをえなくなっているんですよ。
リスクはあるんですけどね。

中里

染め直しもその判断をうちらがやらなきゃならない。
リスキーですよ。履物もそう。
立川には履物屋がなくなった。かかと直しもそう。

伊藤

専門店が苦しい状況になってきて、廃業に追い込まれる時代だから仕方ないんですがね。
北口に来年IKEAができるでしょ。再来年にはららぽーと。
2極化だという説もあるけれど、ららぽーとに車で行っちゃったら、駅前にお客様は戻らない。
買物して食事して終わりですから。
街への回遊性なんて考えられない。駅周辺中心市街地の空洞化が怖いです。

''
中里 晋さん

中里

もうIKEAもららぽーともできることがわかっているのに、
実際何もしていない我々にも責任はありますよ。
でも最初IKEAの出店に関する交通対策で呼びかけられて、1年経たないうちにららぽーとでしょ?
KEAならアイテムが家具、雑貨関係だからまだしも、ららぽーとは総合ですから‥‥。そうなったらもう無理。壁に突き当たったというか、手に負えない。
インフラの話は明日決めても稼働するのは10年先なわけだから、何年後はこうなるとか具体的に話し合っていなきゃダメですよね。私たちも街づくりと商店街のこととを混同していた。商店は商店そのものに売り上げがあって、良くならないとダメなんです。

編集部

街づくりと商売は違うものだということですか?

伊藤

そう。それが中里さんが祭りパレードを中止にしたひとつの理由だよね。実際、商店の人間がパレードのガードマンや交通整理にかり出されてお店を閉めていては、人はパレードに集まるけれど、「商店が潤って活性化」ということにはつながらない。

中里

本当は私だってパレードやってもらいたいんだよ、NPOとかで。

伊藤

実行委員会でいいんだよ。

中里

そうそう。
フラメンコだってね、やって欲しいんだけど、その日だけやるんじゃなくて、恒常的にそういう下地があってね、この街はフラメンコの街なんだなってお客さんに認識してもらって商店が潤うことが大事なんだよ。

''
伊藤良三さん

伊藤

商店街の中にも
自分の商売のことしか考えていない人いますよ。
でも自分の店が良くなるも良くならないも、
商店街にお客さんが来てくれなきゃ始まらない。
不動産管理だって、街が良くならないとテナントが入らない。
駅前であることだけに甘えてちゃいけないよね。
それでもまだ南口は結構夜の人の出があるでしょ。
北は飲食が苦戦しているんじゃないかな。

中里

南はね、
市役所も合同庁舎もなくなって、
地元が声を上げなきゃ自分たちの死活問題だよ
って言ってもね、なかなか実際には危機を感じていない。
子ども未来センターとまんがパークがオープンしたけど、
どうしてもっと活性化のために声をあげて努力しないのかなって思うんだよ。

伊藤

北もね、
IKEAができる、ららぽーとができるって言っても、みんな意外に疎いよね。
今でこそだいぶ認識してきたけれど、以前はIKEAのできる場所さえ把握できていなかった。

中里

南口はね、
小澤さんの先代(入船)や吉田さんの先代(丸万)が尽力してくれて、今の私たちがあるって、
私は本当にそう思うんだよ。
先輩たちが街をこうして作って来てくれたおかげでね、今がある。
あの人たちが頑張ってくれなかったら、一介の呉服屋で家族5人食べて行かれなかったかもしれない。
だからお世話になった方の息子たちが1人前になるまで力を尽くすのが、
私の生かされている意味だと思っているんですよ。

伊藤

今、ジンと来ちゃった。初めて聞いたよ。
南口のために、親父を早く亡くしちゃった息子たちのためにね、
育てるのが恩返しだと思って頑張るなんてさ。感動しちゃった。

中里

伊藤さんのところはさ、イベントやらなくたって、
本体(伊勢丹)がお客を呼んでくれるからいいよ。
本体に人が入れば、否が応でもお客さんは入ってくるでしょ。
うちなんか、間違って道を通っちゃうって感じだよ。間違わなきゃ店には入ってこないよ(笑)。

伊藤

本体がお客を呼んでくれるのは間違いないけど、呉服は厳しいですよ。
だから和雑貨とか草履も扱っています。最初親父に叱られたけどね。
でも、中里さんには休みがあるけど、うちには休みがない。趣味も仕事。
ゴルフもやらなくなった。先日すごく久しぶりにお付き合いでゴルフに行ったら、びっくりしたよ。
こっちは服装がジャンボ尾崎なのに、みんな石川遼なんだもの(笑)。

''
中里 晋さん

中里

(笑)
まあ、商売は商人が考えるけど、
行政に街づくりのハード部分は考えてもらわないとむずかしいよね。

伊藤

行政は商人の立場に立たないから頭に来るんだよ。
駅前のアーチの色ひとつにしてもね、意見書は出しましたけどね。
繰り返しになるけれど、何より空洞化が怖い。
立川は地方都市に比べれば個人店もまだいいと思っていたけれど、今後、IKEAやららぽーとと共存はできない。
どうやって駅前に人を戻すかを考えなければならなくなった。

中里

個店に来てもらう努力が必要だよね。
立川はいろいろな面で恵まれてきたことにあぐらをかいていた。
これからの南口は、IKEAやららぽーとと共存できればと考えています。
その意味で、来街者の胃袋をまかなう街として「たち☆コレ」企画も実施したし、
食べるだけでなくモノを売るという点では、「街ゼミ」をもっと浸透させていきたい。
技術を知ってもらって、モノを売って行く企画です。
実際、ひとつ立川と言えども、南と北と同じじゃないと思うよ。

伊藤

住民のための商店街ね、まさに羽衣町とか栄町4丁目、富士見町や柏町などの商店街は
そういう必要性をもった商店街ですよ。
でも、ららぽーとができてそれらの商店街が廃業を迫られれば、それこそ買物弱者を産み出しかねない。これから高齢化社会を迎えて、どこで買物をしたらいいのか、日常の買物に困る人が出てくる‥‥。
大型の郊外店は餌を求めて彷徨う動物と同じで、食い尽くせば離れて行ってしまうものでしょ。
対して地元商店街は、土地に根を張って生きる植物だから、
駅前だけでなく立川市全体を広く見た時、こちらからの要望はきちんと出していますが、
行政はこれからの立川はどう考えているのか、それを聞きたいですね。

注釈

たち☆コレ

立川南口商店街連合会が主催するまちなか食べ歩きフードバトル企画「たちコレ 立川フードコレクション」のこと。54店舗がエントリーして、2月1日から各店一押しメニューを販売。インターネットによる投票で、3月20日に結果が発表された。

街ゼミ

お店の人が教えてくれる。得する街のゼミナール。
商店街の店主が講師となって、それぞれのお店の個性や魅力、技術を教えてくれる。