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インタビュー

日本の北端 稚内が日本を支える!
第52次南極地域観測隊
越冬庶務 市川さんの応援団稚内市長 横田耕一氏
稚内市教育委員会 教育長 手島孝通氏
稚内市教育委員会 社会教育課 社会教育グループ 主査 近江幸秀氏

稚内市長
横田耕一さん
稚内市教育委員会 社会教育課
社会教育グループ 主査
近江幸秀さん
第46次南極地域観測隊 越冬庶務
稚内市教育委員会 教育長
手島孝通さん
前回ご紹介した市川正和さんの応援団代表、
稚内市長 横田耕一さん、教育長の手島孝通さん、市川さんの先輩で第46次越冬隊員 近江幸秀さん。
ナショナルチームメンバーを自治体から出している稚内市。
南極への思いを語ってもらった。
 
〈人が行き交う環境都市稚内〉
人口約39000人。でも面積は、さすが北海道! 760.84平方キロメートル。立川市の約30倍。水産、酪農、観光を主な産業とする日本最北端の都市。環境問題にも積極的に取り組み、現在74基の風車による発電効果は全国トップクラス。北海道電力に売電する風力発電は、計算上稚内市の消費電力の9割はまかなえる量だという。

編集部

そもそも稚内と南極地域観測隊の縁とは?

手島

第1次越冬観測隊が初めて日本から南極観測に出る時、犬を連れて行った。その犬の訓練地として稚内が選ばれたんですね。
そこからタロ、ジロの奇跡の生還などがあったりして、言ってみれば樺太犬が結んでくれた縁。ですからもう50年になります。
当時犬が置き去りになったという残念な結果で、僕も小学5年生でしたが、学校で樺太犬助けてくださいという手紙を書いて文部省に送ったもんですよ。
今も稚内公園に樺太犬の供養塔だとかジロの銅像がありますよ。子どもたちが毎年そこで慰霊祭をやっています。

編集部

稚内には南極に行かれた方が、近江さん以外にもいらっしゃるとか。

手島

市立稚内病院の院長が2回行ってますし、気象台にいる人も行ってます。
昔稚内に電波観測所があって、電離層の電波を観測する所ですが、そこにいる人が南極に行ってたり。
近江君のすぐ後に引き続いてと思ったのですが、役所もなかなか人材が少ないのと、経費もかかる。去年極地研の正式依頼があって、なんとか職員を出したいということで。市としてはやっぱりこれを大きな稚内市の誇りだと思っています。

編集部

近江さんの行かれた第46次はどなたが隊長だったのでしょう?

近江

観測隊長は松原さんという方で、気象庁稚内気象台の台長だったんです。

手島

それでどうですかと声をかけられて、職員から公募して近江君が行きました。

編集部

近江さんはずっと市川さんに応募することを勧めていたとか‥‥。

近江

稚内市からまた越冬隊員を出す機会は来ると思っていまして、出す以上は責任を持って出さなきゃダメですから。市川君なら間違いないということで、「どうだどうだ」と。

編集部

市川さんは、とにかくよく働くそうですね。

手島

ここにいてもそうです。

編集部

立川で市川さんにお目にかかった時、稚内市役所職員というよりも、もうすでに南極観測隊隊員の顔をしていました。近江さんもそういうお顔してますよね(笑)。

近江

そうですか?(笑)

手島

いや、近江なんか帰って来た時はヒゲなんか生やして、まさに南極帰りでしたよ(笑)。

編集部

日本で南極のライブ映像が見られるのは立川市の極地研と稚内市の科学館だけです。越冬経験者が多い分、立川市より稚内の方がすごいかもしれない。

近江

僕が帰って来て5年経過していますが、講演を80回くらいしています。
その中から興味を示す子どもも実際には出て来ています。南極観測事業というのは継続事業ですから、次世代の子どもたちが観測隊員になってもらわないと続いていきません。興味が形になっていくかどうかはわかりませんが、観測隊員から生の話を聞けるというのはここなら間違いなくあります。
日の丸を背負うという自覚、ナショナルチームの一員になるということは、自分のやるべきこと以外にも興味を持ちいろいろなことを考えるようになりますよね。

(ここで横田市長参加)

編集部

南極観測隊隊員になると、民間の場合一度会社を辞めて国が給料を出しますよね? それを稚内市は稚内市で出していると聞いたのですが。

市長

職員はね。給与は市で出している、まあ研修みたいなものです。

編集部

すごいですよね。稚内市だけだそうじゃないですか。

近江

民間企業から来られている隊員は、自らの会社を一度退職扱いとして国立極地研究所職員(観測隊員)となり南極観測事業費からの給与を受けることになりますから。

市長

国もお金を出せなくなってきたから大歓迎なんですね。お金出してくれるから。
でも稚内市役所に入ったら南極に行けるかもしれないっていうのは楽しいじゃないですか。それでいい人材が来たらね(笑)。

編集部

市長、南極に行きたいですか?

市長

行きたいですよ。あのオーロラ!行ける人間がうらやましくてね。

手島

みんなそうですよ!

市長

みんなそうだよ! 行きたくない?

編集部

行きたいって応募しましたが落ちちゃいました(笑)。全国ネットじゃないとだめですね。

市長

研究者は女性もよく南極に行ってるんでしょ? 今年はどうかな?

近江

女医がいるそうです。

市長

うちの病院も院長がね、2回越冬している。稚内の病院に行けば南極に行ける!
それが理由で研修医が来たとかってならないかね(笑)。来てくれないんだ、研修医が。
全国には越冬してみたい医師が結構いるようですから、そんな形でたとえ1年でも2年でも来てくれれば稚内にとっては大変ありがたい。なにかそういう面白さがあっていいんじゃないかな。稚内の市役所に入れば南極に行けるって。でも市川君は近江君より大変なんじゃないか?

近江

そうですね。私の知り得る越冬庶務の業務の中に輸送業務はありませんでしたから。輸送量、調整など大変だと思います。

市長

飛行機じゃなくて、しらせに乗って行くんだからね。大変だけど、楽しんでいるんだろさ。楽しくなきゃ働けないもんね。

手島

うちも近江君を出してさ、次に出た隊員は必ず比較される。近江君と同じ評価を受けなきゃならない。そういう人間を選ばざるを得ないし、市川君は十分それに応えてくれると思っていた。

編集部

聞くところによると、5年にひとり越冬隊員を出すおつもりだとか。

市長

近江くんが初めてで、でもひとりで終わったらさ、ちょっとつまらんじゃないですか。
職員はどう思っているか知らん。市民だってどう思っているかわからない。バカたれと思っているかもしれない。
でもさ、やっぱりこれも積み重ねた方がいいわけで。3人目があるかどうかもわからない。けれどもひとりじゃつまらない。近江君帰って3年後くらいから? また出してほしいと言われたのは。

近江

いえ、直後からずっと内々に打診は来ていました。

編集部

よっぽど近江さんがよかったんでしょうね。

市長

まあ、それもあったのかもしれないな。それを言い過ぎると危ない(笑)。

近江

給料出してくれますからね(笑)。

市長

国も大変だよね、こんな小さな自治体に頼るなんてさ。

編集部

それにしても、こんな‥‥(笑)。

市長

北の端がね(笑)。一番南極から遠いところね(笑)。

編集部

そう。なぜ稚内は南極南極っていうんだろうって。「南極音頭」ってあるそうですね?

市長

(笑)そうなの! 関係ないんだよ、全然。踊り見たってあれが南極?って感じがするんだけど、名前は南極。

編集部

夏のお祭りは?

手島

「みなと 南極まつり」。

編集部

冬のお祭りは?

市長

手島

近江

「南極ハイランド」!

編集部

(爆笑)

手島

(笑)それはまだいかにもですよ。冬の様子でね。

編集部

なんでも市長が南極好きだからと聞きましたが。

手島

市長になる前からですよ(笑)。

市長

なる前から(笑)。関わりは持っていたけどね。でもやっぱりタロ、ジロですよ。
それと最近は稚内のエコ環境が豊かだから、風車、風力発電に熱心に取り組んでいる。
そういうことを通してもっと南極観測というものを国民が知るべきだなと思うんです。
観測隊が何をやっているか知らない人まだまだいるでしょ?

編集部

いますよ。私どもも一生懸命伝えようとはしていますが‥。
なにしろ極地研は立川にあるんですから。

市長

最近極地研自体が表に出て発信しようとしていて、報道の人も南極に行くようになって、初めて外に自分の方から情報提供するようになった。
ただね、僕らはバカな話なんだけど、そういう南極でやっていることを知らせたい、知るべきだとね。
それで南極昭和基地を稚内に作ろうとした。荒唐無稽な話でしょう? 実際にプロも含めて検討したら、100億かかるって。これはもう無理だとほとんど諦めたんです。
諦めながらも、ちょっとね、やっぱり南極の体験をしたい。シバレあがる大沼で、キャンプやったんですよ。10年ぐらい続いたかな。もの凄い寒い。その時にこれだけじゃつまらないから、しらせと昭和基地と電話で交信しようと。いまリアルタイムでどんな状態なのか聞こうじゃないかとね。

編集部

すごい。ロマンを追ってますね。

市長

当時のNTTだとかKDDの関係者に相談して電話代の交渉をしたり、文科省と交渉して南極に電話を受けてもらおうとか。今では結構やってくれるけれど当時はそんなことやっていなかった。向こうからするとこの忙しい時に何を言ってるんだって。
だけど受けてくれたのさ。電話代タダでさ、それが5分間くらいって約束がさ、20分もしゃべってたりしてね。
そういうことから始まって、まあ、しらせとも交信して、2~3年目くらいから子どもを集めてね、子どもらにも越冬させて。それは寒いんだ、本当に寒いの。
実際に、一番最初に電話かけた時、向こうが+10度、こっちが-8度で、「え?」ってみんなでびっくりしてね。そういうことって実際にやってみないとわかんないじゃない。

編集部

そうですよね。聞かないとわかならない。

市長

興味のある人はわかるかもしれない。だけどそういうことをみんなもっと知るべきだし、地球の環境のことを考える契機にするためにも、我々が南極観測に興味を持たなきゃいけないんじゃないかと。

編集部

子どもたちも興味持つでしょうね。なかったとしても、理科離れが叫ばれている時、すごく大事だと思います。

手島

昔は南極越冬したつもりで、完全に凍った大沼で、その真ん中を極地と仮定してそこをめがけて歩いて踏破するとか。しらせや昭和基地と電話交信するとか。そんな時、子どもたちの目はやっぱり輝いている。

編集部

そうでしょうね! 稚内ってすごい! 日本最北端の小さな自治体が日本を支えてるっていう感じがしますね!