インタビュー

一度きりの人生、精一杯生きたい歌手 はいだしょうこ氏

歌手 はいだしょうこ さん

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立川生まれ。両親とも音楽家。幼少期より作曲家の故中田喜直氏のもと童謡を学ぶ。宝塚音楽学校を「オペラ部門主席/ポピュラー部門最優秀歌唱受賞」など優秀な成績で卒業し、宝塚歌劇団入団。高い歌唱力で4年目には公演フィナーレをソロで飾るエトワールに。同歌劇団退団後、NHK「おかあさんといっしょ」の『第19代うたのおねえさん』に。2008年3月、『うたのおねえさん』を卒業、誰からも愛されるプロフェッショナルな歌手として活動をスタートした。現在、天王洲 銀河劇場にてブロードウェイミュージカル「回転木馬」に出演中。

聞き手 清水恵美子(しみず・えみこ)/えくてびあん&多摩てばこネット編集工房

宝塚から『うたのおねえさん』へ

 

編集部

今日はよろしくお願いします。私は初対面ですが、「えくてびあん」には小学生の頃ご登場いただきました。大人になられて、本当にきれい。

はいだ

いえいえ、全然変わってないです。

編集部

しょうこさんは立川生まれ。国立音大の付属高校から宝塚に入られたんですね。宝塚は厳しかったんじゃないですか?

はいだ

厳しかったですね。厳しいって言うのは聞いていたんですけれど、芸事の厳しさかなと思ったら、上下関係だったり、しきたりだったり、規律だったり。最初はそれにすごくびっくりしました。

編集部

芸事の厳しさもあるんでしょう?

はいだ

もちろんありました。朝からずっとレッスンと言いますか、授業がありました。数学のような勉強はないのですが、音楽理論とか芸術に関する授業もありました。

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編集部

歌劇団入団後、宝塚の舞台には何年立たれていたのですか?

はいだ

5年です。

編集部

その後すぐNHKの『うたのおねえさん』になられました。『うたのおねえさん』のイメージはすごく強くて、ファンも多いですね。おねえさん時代はどうでしたか?

はいだ

子どもが好きで、歌を歌うことも好きなので、すごく楽しくできました。

編集部

うたのおにいさんともうまくかみ合ったのですか?

はいだ

はい。体操のおにいさんやおねえさん、他のスタッフは以前からずっとやっていた方たちで、新しく入ったのが『うたのおにいさん』と『おねえさん』だけだったんです。それで、何でもふたりで助け合ってきたし、子どもを思う気持ちとか他の感覚もとても似ていたので……。

歌手としての大舞台 そして、これから……

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編集部

コミュニケーションがうまくとれたわけですね。昨年、『うたのおねえさん』を引退されましたが、今後はどんなふうに活躍されていくのでしょう?

はいだ

う~ん、いろいろなことに挑戦していきたいですね。

編集部

すでにたくさんのことをやってこられているのに? 舞台もやってきたし、『うたのおねえさん』として多くのファンもいる。

はいだ

自分の中で「歌」というものが芯にあるので、「歌」からブレることはありません。人生って一度きりだし、できるだけチャレンジして精一杯生きていきたいなっていつも思うんです。いろいろなことを経験することで、自分も人間的に成長できると思いますし……。その中で「歌」ははずせないもので、一番自分を表現できるものだと思うんです。

編集部

今回のミュージカル「回転木馬」では、どう自分を表現していきたいですか?

はいだ

久しぶりの大舞台で、しかも外国人の演出家の方なんです。ワークショップなどでも感じることですが、自分では気づけない面を引き出してもらえるというか、すごく勉強になります。また、私が演じるのはキュートな少女の役で、思ったことをポンポンと言うんですね。天真爛漫に何でもポンポン正直に言ってしまうというところは、挑戦だなあって思います。

編集部

「回転木馬」の主役カップルは、思ったことを口に出せない、相手に自分の気持ちをうまく伝えられないもどかしい役柄ですよね? そのふたりに対して、しょうこさんの役柄はポンポン言っちゃうわけですね?

はいだ

そうですね。でも、とっても明るくておちゃめで、3枚目名のようなところもあり、自分に近い部分もあってとても楽しみです。でも、キャリーみたいにケンカはあまりしないからな……。

編集部

そこは挑戦なんですね。

はいだ

はい。私はまず基本的に「人見知り」なので……。

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編集部

ご姉妹は?

はいだ

姉がいます。小さい頃から母親と姉の後ろに隠れている子で、心配した両親が「この子は引っ込み思案だから、なにか自分を表現できる手段はないだろうか」とあれこれ考えていたそうです。そんな時に、おうちで歌を歌っているときだけ自分が前に出てくるよねということで。じゃ、この子に歌をやらせてみようというのがこの道のきっかけになりました。

編集部

なるほど。今回の役はやはり勉強になるんでしょうね。ミュージカル以外には何をしてみたいですか?

はいだ

今、ファミリーコンサートが多いんですが、もちろんそれも続けながら、「はいだしょうこ」のコンサートをやってみたいです。オペラだったりミュージカルナンバーだったり、子どもたちにもおとなの人にも観てもらえるコンサートがやりたいです。子どもにも、子ども向けの歌だけでなくいろいろなジャンルの歌を聴いてもらいたいですね。

しょうこさんの子ども時代

 

編集部

5年間毎日子どもを見ているといろいろなことに気づくと思うのですが、子どもの変化など気づかれたことはありましたか?

はいだ

そうですね~。いつの時代も子どもは純粋で真っ白で変わらないと思います。子どもを取り巻く環境が変わってきているのではないかなと思います。ゲームなども増えてきていますが、家族で過ごす時間を大切にすることが必要だと思いますね。愛情たっぷりに育てていくというか、小さい頃からお話をしてあげる、歌を歌ってあげる、やっぱりお母さん、お父さんの歌が一番だと思います。

編集部

愛情を注いで育てる。しょうこさんのお宅はそうだったんでしょうね。

はいだ

そうですね。 家族で過ごすことが多くて……。

編集部

お父様もいっしょに宝塚を観にいらっしゃるそうですものね。

はいだ

はい(笑)。父も忙しかったですが、忙しいながらいろんな所に連れて行ってくれましたし、ご飯はみんな揃って食べようとか、クリスマスとかお誕生日などの行事は必ずみんなで集っていました。ですので、家族での会話はいっぱいありました。母親は歌をたくさん歌ってくれましたし、寝る前には本も読んでくれました。

編集部

「回転木馬」に戻りますが、このミュージカルは対照的な夫婦の物語ですよね? 見どころはどういうところでしょう?

はいだ

そうですね。主役の笹本玲奈さんと浦井健治さんのカップルと、私と坂元健児さんのカップルとが、恋愛のしかたなど、対照的。で、最後にお客様が色々な愛の形を、それぞれ感じるというか考えさせられる。というところでしょうか。

編集部

おもしろそう。劇中で歌われる歌も有名な曲だし、演出家の方もお稽古に入る前にワークショップをなさるなんて、ずいぶん力が入っていますよね。そういう大作に出演できるなんてすばらしい!

 

はいだ

はい。幸せに思います。

編集部

それにしても、しょうこさんは美人だからおとなっぽいイメージだったんですけれど、話すとかわいい方なんですね(笑)。

はいだ

話すと違うってよく言われます。しゃべらない方がいいって言われます(笑)。

編集部

天は二物を与えずって言うけれど、3つも4つも与えていますよ。

はいだ

絵はヘタですけれど……(笑)。

撮影場所:カフェ ばくだん畑
写真:五来 孝平