インタビュー

ひな祭り特別企画お雛様について色々聞いてみました。
コーディネーター 金田鈴美氏

ひな祭り特別企画
3月3日は桃の節句、ひな祭り。女兄弟がなく、女のお子さんのいない方には縁遠いお祭り。実は私もその一人ですが、そのお雛様、他のスタッフと話をしてみると、「男の人形と女の人形どっちが右だった?」案外知っているようで知らないことがわかりました。 そんなひな人形について、立川市砂川町にある秀光人形工房でお話をうかがいました。 対応していただいたのは、コーディネーターの金田鈴美さん。 普段は千葉県市川市の工房で人形作りをされています。
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―ひな人形にあまり縁がなかったので、今日はお雛様についていろいろ教えていただきたくて伺いました。
金田
わかりました。豆知識みたいなことでいいですか?もともとは「流しびな」という藁人形が始まりとされています。その子の厄(やく)を水に流して祓(はら)うという風習。お雛様が今のように立派になったきっかけは、宮中の女の子のままごと道具が起こりと言われています。このままごと遊びと流しびなが一緒になって現在のお雛様になりました。

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◆関東中心に女性が右が主流

―男の人形と女の人形、どちらが右とか決まっているのですか?
金田
昔の日本では上座(向かって右側)に偉い人、昔の日本の考え方だと男の人が偉かったので、男の人が右側、女の人が左側でした。昭和天皇のご即位時に日本も西洋化しようという流れがあり、西洋のレディファーストを取り入れて、女性を右としました。そこから、一般の人の結婚式も女性が右になり、お雛様は結婚式の姿なので、これを取り入れています。ただし、京都では今でも伝統的に男の人が右側、女の人が左側です。

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◆京都は伝統的な男性が右が主流

―お雛様を飾る時期はいつからですか?
金田
ひな祭りは3月3日、初節句は松が明けたあたりか、小正月1月15日あたりから飾りはじめます。2年目以降は2月3日節分のあと、家の中の鬼を払ってから飾ります。片付ける時期は3月3日を過ぎたら早くという話がありますが、これも諸説があって、昭和のころに女の子の飾りを出しっぱなしにするのはだらしない、きちんとしていないとお嫁にいけないという意味から、用事がすんだら片付けなさいという話になったと言われています。

―お雛様にはやりはありますか?
金田
顔の違いが一番わかりやすいですね。昔はおちょぼ口でふっくらしたものが主流でした。今は目がパッチリで二重がはやりです。衣装は2年ごとにはやりが変わります。お雛様は結婚するまでのお守り、身代わりびなです。結婚してからは旦那様が守ってくれるのでお役御免なんです。(笑)母親のものをあげるということもあるのですが、身代わりびななので厄もあげることなのであまり好ましくないですね。

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◆左が昔の顔の表情、右が今風。

―手入れなどはどうすればいいですか?
金田
お雛様は80年もちます。手入れはほこりを払う程度で大丈夫です。本来は、ままごと道具なので、手などを動かすこともできます。ただしお顔は胡粉(ごふん)でできています。手の油に弱いので注意が必要です。お雛様は身代わりびな、本人の代わりに厄を受けてくれたと考えられていますので、傷ついても、代わりに受けてくれたと、そのままにするという考えもあります。もちろん修理は可能です。

―最近の傾向は?
金田
そうですね。住宅事情も関係して、なるべく小さなものという傾向がありますね。収納しやすいものが好まれています。購入は母方の親が買って送るのが昔ながらなのですが、最近は母親、おじいちゃん、おばあちゃんご一緒に来られることが多いですね。購入時期は1月いっぱいが多く、2月中頃まで続きます。購入されるのは初節句が多いですね。

―ということは、赤ちゃんは選べないので、お母さんたちが選ぶ?
金田
買ってもらう本人が買うことはないですね。たまに自分で選ぶ子もいます。おそらく、本人が友達の家の雛飾りを見て欲しくなったのかな。幼稚園でも飾りますしね。本人が選ぶときはピンクを選ぶ子が多いですね。親はシックなもの選びます。
 

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◆デニム生地のお雛様

―妹が生まれた時にはどうするのですか?
金田
お雛様は本来、身代わりびななので、本人に対して一体が望ましいですね。妹さんには小さいものを購入ということもあります。場所がなければ、名前の札を置く場合もあります。
小さくても大きくてもお雛様を作る手間は一緒なんです。今年はデニムのものを話題になればと思って作ってみました。日本産のデニム(藍染め)を使っています。

―立川や市川に工房があるのは材料が揃えやすいからですか?
金田
いいえ。ひな人形はすべてを一か所で作るのではなく、全国各地で作られたものを集めて作り上げるものなんです。例えば家具類は静岡県。埼玉では顔や髪の毛を作っています。衣装は各地の人形工房で作られています。秀光人形工房でも衣装を作ります。藁の胴に衣装を着つけて、全国から集められたものを組み込んで、ひな人形に仕上げています。お雛様は安いものでも手作業で作られています。

―お客さんからの要望などは?
金田
この着物を使ってお雛様が作れないかとご相談される方もいらっしゃいます。帯が多いですね。繁忙期などはお時間を頂戴することになりますので、あらかじめご相談ください。秀光では職人が接客をしています。平日は制作、土日に接客といった感じですね。接客することは、すごく勉強になります。今のトレンドがよくわかるし、今後の創作のヒントにもなります。お客様の生の声が聴けるのはいい機会だと思っています。本当はその意見をすぐに取り入れたいのですが、作るのは次の年になってしまいます。

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ー少子化でおじいちゃん、おばあちゃんはより一層初孫がかわいいのでは?
金田
確かにおじいちゃん、おばあちゃんは、初孫にひな人形を買ってあげたいと思うのですが、核家族なので、決定権はお母さんにあります。住宅事情もあって、現金がいいなんてことも多いみたいですね。昔はお祝いということでひな人形を送ったりしたのですが。

ー使わなくなった人形はどうするのですか?
金田
手放すときの処理に困るというご相談を受けることもあります。秀光では預かってまとめてから神社へ供養に持っていきます。ご相談ください。

―本日は色々と教えていただきありがとうございました。

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名称 秀光人形工房
所在地 〒190-0031  立川市砂川町2-41-8
TEL 042 (534) 6300
営業時間 節句人形期間(11月から5月5日)
10:00~19:00
土、日、祝日も含め、毎日営業しております。
※1月1日から3日は除く

製造期間(5月から10月)
10:00から18:00
土、日、祝日はお休みさせて頂きます。