『うなぎ しら澤』

とかく話題になったうなぎ。
おかげでうなぎの産地は日本の西の方だということを改めて知った。

産地ににこだわると、値段の折り合いがつかなくて買わずに帰ることもしばしば。
食べずに暮らすこともできるけれど、年に数回でも食べられたら嬉しい。

新美南吉の童話『ごんぎつね』では、兵十が病気の母親に食べさせたくて川でうなぎを獲っている。
日本にはそんな時代があったらしい。

そんなに高くないわよと聞いて、曙町にあるしら澤へ。
まずは『お通し』と『うまき』。
色鮮やかな2品が並ぶ。



メニューにはないが、『白焼き』がおすすめだそう。
香の物をつまみながら、うなぎを蒸している時間、「まだかな……」と待つ。
きゅうり、かぶのぬか漬けに、にんじんが色を添えた漬け物。
白菜漬けは味がこなれ?てまろやかだ。

やがて、温めた皿に『白焼き』が。身が厚い。高さがある。
本わさびを乗せて、しょうゆをちょっとつけていただく。

時間をかけてゆっくり蒸したうなぎを香ばしくあぶったひと品。
口の中でアツアツの身がほどけ、さっぱりしているのに脂の旨味が口中に広がった。
蒲焼きとはまったく別物。
お酒によし、ごはんによし。

しら澤の『うな重〈特〉』は、ご飯とうなぎが別々になっている。
うなぎがお重に入りきらないからだ。お皿にのったうなぎは2匹。
香りと照りで、おいしそう。
早く食べたいのを我慢して、まずは、お重のふたを開け、タレをまぶしたご飯に１匹を乗せる。

山椒をかける。
この山椒がまたいい。
深い緑で、目にまで香ってくる。



もう一度、ふたを閉める。その間に、焼きたてのもう1匹を少しずつ味わう。
ペタペタと唇にはり付くうなぎ独特のまったり感。
やっぱりご飯が恋しくて、ご飯に乗せたうなぎはどうかなとふたを開ければ、ほわ～っと漂うこれぞ『うな重』という香り。
ご飯とうなぎを一緒に口に入れる。
ふんわり柔らかいうなぎと粘り気のあるごはんが混ざり合って、幸せだなあと思う。
肝吸いをいただく。ゆずとミツバが口の中をさっぱりと洗い流してくれる。
透き通ったお椀に肝とかまぼこ。

うなぎはやっぱりごちそうだ。