気になる人・インタビュー

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気になるあの人…突撃インタビュー
立川市内で生産される名産品の数々。育てる方々のインタビュー。

ふつうのものをいかにきれいに おいしく作るかが腕のみせどころ。

今回も前回に続き、立川市幸町が舞台。江戸時代から続く農家、清水農園さんの畑にお邪魔しました。取材時は、ナスの時期もそろそろ終盤を迎えた、いわゆる秋ナスのシーズン。日差しを浴びてつやつやと光るナスを見ながら、清水さんの畑仕事への情熱、こだわりを伺いました!
清水大介さん

東京都昭島市出身。
結婚を機にサラリーマン生活から一転、奥様の実家の農家に入る。
ゼロから農作業を学び、今ではお義父様に代わり畑仕事を一手に引き受けている。
腕を見込まれて希少な品種の栽培を頼まれることもしばしば。

サラリーマンからの転身。
決めたからには一番を目指して。

清水大介さんは、立川の地で江戸時代から続く農家の9代目。
てっきり生粋の農家の息子さんなのかと思っていたら

「私は婿に入ってこの仕事についたんですよ」

とさらりと一言。まずはこのお仕事を始める当時のことを伺いました。

「学生時代はずっと野球をやっていて、大学卒業してからは普通にサラリーマンをしていたんです。
サラリーマン家庭で育ってますから自分もずっと会社員をやっていくんだろうなと思っていたんですが、当時付き合っていた彼女と結婚という話になったとき、初めて実家が農家だってわかったんですよ。
そういえば彼女を家に送ったときに大きい家だなとは思ってたんですが、まさか自分が農家の跡取りになるとは夢にも思いませんでした。
まあ多少は迷ったかもしれませんが、結婚を機に気持ちに踏ん切りをつけて、まったく勝手のわからない世界に飛び込みました」
それこそ“畑違い”の職種。さぞや大きな葛藤があったのではと考えてしまいますが、清水さんはスパッと覚悟を決め、新しい世界に進んでいきました。

「もともと負けず嫌いなんですよ。それに妥協するのも苦手。根性とか我慢は、野球で慣れているから、朝の早いのも暑さ寒さも思い通りにいかない作物相手の仕事も越えてこられました。農業というのは、やった分だけちゃんと成果が目に見えるところがわかりやすくて性分に合っていたのかもしれないですね。それに農家は個人事業主。100%自分の責任で経営していくところも面白いと思えたんですよね。一年に一回の収穫で失敗できない中でいかによいものを作るかは難しいけれど、やりがいはあるんだよね。またね、親父がうまいんだよ。まだまだかなわないけれど、ようやく自分なりの作り方も見えてきて、やるからには、例えばナスなら清水だと言われるくらいになりたいよね。何でも一番が好きだからさ」

やはり野球人としてのアスリート魂が騒ぐのでしょうか。野菜作りにも妥協なく努力を積み重ねる清水さんの姿勢がカッコイイです!

奇をてらわず、ふつうのものを
当たり前に上手につくれることが基本。

今回は、ナスをメインに取材をさせてもらいましたが、畑にはナスだけでも4品種が植わっていました。
珍しい品種のものは、種苗業者から依頼されて栽培しているそう。

「本当は家庭でいちばん消費されるふつうの千両ナスだけでもいいんだけれど、例えばこの江戸東京野菜の“寺島なす”は業者からの依頼でね、絶滅させないように育ててほしいということなんですよ。
小ナスで見た目もいいので一般家庭というよりは料亭や大きなスーパーで需要があるものです。でも、こういう希少な品種はすごく手間がかかるんですよ。
200年近く品種改良されていないので、それだけ病気になりやすいですから管理が大変です。」

こちらが江戸東京野菜の“寺島ナス”。
かつて“寺島”という地名だった東京都墨田区で
作られていたいわゆる小ナス。
ナス特有の香りが強く、実がしっかりとしまって
小さいけれど食べ応え充分。

清水農園で作っているナス。
左から白なす、庄屋ナス、千両ナス。庄屋ナスは細長い品種。
ナスにストレスがかかると曲がってしまうので手間がかかります。

「私はやっぱり、農家はまず一般的な品種を上手く作ることがいちばん大事だと思うんですよ。
ふつうのものも上手く作れないで、目新しいもの、流行のものに手を出して、ブームが終わったら売れなくなってしまうのでは、経営も立ちゆきません。
ある程度は注目されるかもしれませんが、流行ではなく、いいものを作り続けることが買い手との信頼関係も深くなりますしね。
ふつうのものを当たり前に上手につくれるようになることが大事。
ナスなんかは年に一回の収穫だから、答え合わせは一年に一回。
それを積み重ねて今年よりは来年、またその次の年、と経験値を糧にしてよいものを追及していくんです。
どこの農家もやっていると思うけど、ちゃんと日誌は欠かさずつけて、データをためていくんです」

清水さんの野菜づくりのポリシー、こだわりが垣間見えるお話です。
また、生来の負けず嫌いはこんなことにも現れているとか。

「5年毎に野菜の品評会があるんですよ。
うちはトマトで2回、賞をとっているんだけど、ナスではどうしても勝てないやつがいてね、負けず嫌いですから試行錯誤して挑戦しています。
品評会を嫌う人もいるんだけれど、人と比べると身の程がわかるんですよ。
比べないと自分の野菜がいちばんいいと思って努力しなくなってしまうでしょ。
それでは家庭菜園の延長レベルになってしまう。そうした意味からも私は出品してますね」

手にとっているのは千両ナス。
収穫シーズン終盤ですが、つやつやと輝いています。

都市型農業の形を模索
仲間との連携も力に。

清水農園さんの畑は、町に数ヵ所あります。
伺った場所は、一般住宅とマンションにはさまれた場所でした。
住宅と農業が共存するいわゆる都市型農業を実践しているといえます。
いかに効率よく作物を育てるかという課題は常にあります。

畑のすぐ隣は住宅街

「今、親父が少し畑をお休みしているんで、じつは初めて自分なりの挑戦をしているところなんですよ。
大根なんですが、今まではベテランの親父の言うとおりに27~30cm間隔で植え付けしていたんですけど、自分なりに考えて24cmにしてみたんです。
間隔を開けることで大根を太くしたい農家さんが多いんだけど、私は少し細めがいいと思っているんですよ。
大根1本買っても余らせてしまう家庭が多いでしょ。
なら少し細めでもきれいなものなら需要はあると考えて、今年挑戦しているところなんですよ。
もちろん、古くからのやり方は理にかなった部分は多いけれど、気候も人の嗜好も変わっていく中で、時代の変化にも対応して、常に努力をしていかないと発展できない。
植え付けは、親父にばれたら怒られちゃうけどね(笑)」

冬に向けて収穫を待つカブ。清水さんの思惑どおりに
できているか楽しみです。

同じ立川市近辺の農家のお仲間もたくさんいらっしゃるようで、情報交換だけでなく、都市型農業の未来を仲間で担っていこうというような気概も感じられます。

「直売所とかに持っていくとほかの野菜見て、私は口が悪いからさ、思ったこと言っちゃうんだよね。
『こんなのだめだよ、誰が作ってるんだよ』
とかって。
でも自分が言ったことは返ってくるわけだから、恥ずかしくないものを作る努力は惜しまない。
結局は畑に出ている時間が長いものが勝ちなんですよ。
そうしてお互いが認め合える仲間が集まって、地元の野菜を直売するみの~れ立川の立ち上げもやりました。
地場のものを食べてもらえるような販路を開拓して、都市型の農業が活性化できればと思ってますね」

プライドをもって農業に携わっている姿は、何度も言うようですが、カッコイイ! 今後も清水さんたち世代の農家さんたちの新たな挑戦は見逃せません!
そんな清水農園さんの野菜が買えるのは、こちらです。

みの~れ立川
【住所】東京都立川市砂川町2-1-5
【電話】042-538-7227
【営業時間】10:00~17:00

みの~れ立川幸町店
【住所】東京都立川市幸町1-14-1
【電話】042-535-3711
【営業時間】09:30~16:00 

ヤオコー立川若葉町店
【住所】立川市若葉町1-12-1
【電話】042-538-1711
【営業時間】09:00~21:30