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インタビュー

アニヲタが集まる理由、国文研にあり!
アカデミックたちかわ――国文学研究資料館国文学研究資料館/総合研究大学院大学日本文学専攻 教授 山下 則子氏

国文学研究資料館 総合研究大学院大学日本文学専攻 教授
山下 則子 さん(ペンネーム 高橋則子)

アニメ、漫画ブームは今や世界的!
日本の誇る文化の元は国文研に。

高度な教養を要する江戸文化。
漫画だなんてあなどれない!

*

編集部

先生、夏の子供見学デーでお目にかかりましたね。

山下

はい。あの百人一首大会は国文研の市民貢献事業の一つとして提案したものです。
定時制高校の教員を十六年やっておりまして、興味を持たせるということを常に意識してきました。そこでこの百人一首はとても人気だったので、ここでもカルタ取りを提案したのです。

編集部

先生のご専門は百人一首ではないですよね?

山下

最初は草双紙が専門だったんです。まあ、漫画の先祖みたいなものです。こういう風に絵と文が一緒になっている本です。

編集部

本当に漫画みたいじゃないですか!

山下

これはこの冊子のコレクターだった子供が色を塗ったものです。
三田村彦五郎と言う子ですが、この子についてはある程度研究がされていて、武士の子供でお姉さんと一緒にこういう黒本、青本を集めていて、今で言うまさにコレクターですから、とても綺麗に保存してあるのです。

編集部

三田村君はアニヲタなわけですね(笑)。これは何のお話なんですか?

山下

『伊勢物語』です。青本といいます。もともと青かったのが、草花の染料だから色が飛んじゃって黄色っぽくなってますが、青本。他に赤本もあります。

編集部

赤本とか青本とかの違いって何なんですか? 今のジャンプとかサンデーとかのような違いがあるのでしょうか?

山下

時代的な差、つまり赤本が最初で次に黒本ができて、青本と黒本が一緒に出ていた時代があって、その後が黄表紙といって完全に大人向けのコミックみたいな、大人向け漫画になってしまったのですね。

クリックすると拡大画像をご覧いただけます。

編集部

先生のご専門はこの漫画の先祖‥‥?

山下

でしたが…。研究は続けていますが、『草双紙事典』という本を共著で出して一応集大成しました。この黒本・青本の絵は浮世絵師がアルバイトで描いていたのです。それで浮世絵の勉強もしようと思い、当時一番の娯楽は歌舞伎や浄瑠璃で、それが黒本にも出てくるので歌舞伎の勉強もしてとやっていくうちに、やっぱり浮世絵の方が華やかなものですからそっちへかなり移行してしまいました。

この浮世絵の人物の衣裳は正面摺りで光るように摺られていて、顔から市川海老蔵の祖先の人だとわかります。
「擬五行尽之内 王位を望む木 大伴黒主(なぞらえごぎょうづくしのうち おういをのぞむき おおとものくろぬし)」と書いてあって、王位という権力を望む気持ちと五行「木火土金水(もっかどごんすい)」の「木」とを掛けているんです。なぜなら五行の「木」になぞらえられているのは大伴黒主という人で、〈積恋雪関扉(つもるこい ゆきのせきのと)〉に登場します。
黒主は六歌仙の中にも入っていますが、なぜか悪人ということになっています。
背景は雪景色。その中に桜が咲いている。これは木こりに化けた黒主の正体を知る小町桜の精霊が現れて大伴黒主と戦うという、小町桜の木がポイントの作品なのです。

編集部

難しい!

山下

でも面白いでしょ?しかも似顔絵になっていて、ほら、目が大きい。
これは七代目市川団十郎が五代目市川海老蔵という名になった時で、この大伴黒主は彼の当り役でした。衣装には牡丹立涌。実は牡丹は市川家の替え紋。「寿の字海老」はもちろん市川団十郎の模様です。

編集部

広告みたい!

山下

ね! 情報満載なだけに全部わかるようにするには勉強することがたくさんあります。
でも好きだったら大変じゃないんです。綺麗だしね、安価だし、だからすっかりこちらにハマってしまって(笑)。
幕末の浮世絵はものすごく数が多くて、今まであまり価値が認められていなかったから安い。これは天保の改革の後に出た役者絵だから、役者の似顔絵を描いてはならないことになっていたので、役者の名前が入っていない。でも、昔の人は歌舞伎が大好きですから、似顔絵を見れば誰だかすぐわかります。だけど私たちが似顔で判断するためには、当時の役者の顔も勉強しなくてはなりませんね。

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