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昨年に続き、今年も―
「少年野球監督に聞く」第2弾 !

Part.1 小作台少年野球クラブ監督 井上弘明氏(監督歴 5年)
'' 『第33回 G1杯都下少年野球選手権大会』決勝戦。
小作台少年野球クラブ VS上砂ファイターズの一戦は、数々の決勝戦の中でも心に残る、とてもいい試合でした。
チームを優勝、準優勝に導かれた両チーム監督のお二人。
ご自身の少年野球時代もふり返りながら、今の思いなどを語ってくださいました。

小学生レベルじゃないところまで教えたい。

自分が野球をしていた時のことをよく思い出すんです。
守っている時って、やっぱり緊張しますよね。
大きな試合になれば、みんな観に来てくれますし。
自分の高校の時もそうでした。
先輩と一緒に試合に出ている時など、エラーなんて絶対出来ない。
「そらお前ら、緊張するわ~」って(笑)
でもその緊張を乗り越えるのは練習しかない。
マイナスのことを考えたりするのも、練習をどれだけやってきたかで違ってくる。
だから練習の時は厳しい事も言うし、追い込まなくちゃいけない時もあります。
でも試合になったらお前に任せたよって。
チャンスになったら自分で決めてこいと。
そこで、よし俺がやるとか、腹を決められるかだと思うんです。
守備の時もそう、俺が絶対アウトにしてやる、という強い気持ちを持ってやりなさいと。

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3つ違い の兄の影響を受け、小学2年生から野球を始める。中・高・大学と野球を続け、高校・大学ではセカンドで活躍。監督自身の息子二人も小作台少年野球クラブで育む。

練習を一生懸命やっていることは、どこのチームにも負けないと思っています。
時には自分が高校で初めてやった練習なんかも取り入れたりして。
都大会の試合になると、試合時間が長いので、7回ちゃんとやるんですよ。
7イニングって結構長いんです。まだ小学生ですから、
やっぱり集中力が切れてくる。
5回、6回くらいになると、お前らこっからが勝負だよ。
いつもちゃんと練習してきたからお前たちなら大丈夫だよって。
いかに集中して、いつも通り、練習通りのプレーをするか。
試合中、子供たちに集中力と平常心という言葉を伝えます。

子供たちを信じて、結果は全部受け入れる。

三振するとかエラーするとか、そういうことでは怒らないです。
しっかり走らないとか、ちんたらやってるとか。
そういうことができないんじゃ、フィールドに立つ資格がないんじゃないの?と。
試合の前には、エラーしようと三振しようと、全部俺(監督)の責任でいいよって、言います。
監督として、一生懸命練習をやった選手のプレーは、そのすべてを受け入れなきゃと思っていますし、失敗した時、一番つらいのは本人ですからね。
子供たちを信じて、使って、失敗なり三振しても次の練習にぶつけて欲しい。
悔しい気持ちを次につなげて欲しいと思うんです。
この子たち、ここで終わりじゃないじゃないですから。

自分が一番子供たちのことを見ている、という気持ちで。

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勝ち続けていたらいいチームは作れない。負けて強くなったという井上監督。監督を始めた頃は一回戦負けが多かった。でもあの時代があったから、と感慨深げにふり返る。

試合だけ、結果だけを見て仮に何か言われたとしても自分が一番子供たちのことを見ていると思っているし、一番わかってるんだから、戦術も含めて、 最終的には自分が腹を決めるしかないという気持ちでやっています。
だから試合が終わった後で悔やむことは、ほとんどないですね。
あるとしたら…家帰って、ああ、今日は子供たちにきつく言い過ぎたかなとか。
そういう葛藤はありますね。
自己嫌悪っていうか。それで明日練習こなくなるとか、
そういう心配はしてないんですけど(笑)

子供たちの中で、力の差っていうのはやっぱりあるんです。
それぞれに成長過程がありますから、しょうがないですね。
でも、その子だけ出来ないことを認めてやさしくしちゃったら、そこで終わってしまう。
もう小学5・6年生ですから。
「なにやってんだ。あの子は、そのボール取ってるじゃないか!」って練習の時に言う事もあります。
子供たちの中でも自分に出来る事、出来ない事、自分以外を認める事は、チームワークとして大切なことだと。
でもなにくそと頑張ってくれる子は、伸びる子だと思います。

複数ポジションこなせる選手を作る。
それがチームの総合力に。

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冬の時期から「今年は春から夏にかけて試合が重なって、忙しくなるよ」と子供たちに伝えてありました。
ですから冬場の練習ではスタッフも一緒になって、みんな本当によく走りましたね。楽しみながら(笑)。
案の定、この夏、猛暑の中、7月には3日で6試合。
「くりくり大会」でも3日で5試合、戦い抜きました。
そして、それが全部勝てたんです。
子供たちにとって、自信につながったことと思います。
自分たちのやってきた練習は間違ってなかったと。

連戦の時のために、うちはピッチャー5人、
キャッチャーも2人。
セカンド、ショート、複数ポジションこなせるように準備、練習をしてきました。
そうしてバランスをとっておけば誰か調子が悪いなって時にも、誰かが入れる。
ピッチャーについて言うと、完投させることはほとんどないです。
ここで終わりじゃないですから。
酷使するようなことはせず、球数を確認して交代させる。
そしたら次、投げる子が頑張る。
そしてまた替わって投げた選手も、必死で練習して一本立ちする。
子供達もやらなくちゃ、というサイクルになったのかも知れません。
去年の秋と比べると、今のポジションはだいぶ変わっているんですよ。
一つのポジションがきちんと出来るようになるまで、他には動かしません。
中途半端になりますからね。

次につなげられるものを残したい。

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今の6年生、卒団まであと半年、カウントダウンですよ。
この子たちが、最後どういう試合を迎えるんだろう。その時にいい試合がしたいと今から祈っています。
他のコーチ、スタッフも一生懸命やってくれていて、試合が終わった時など、ミーティングの度ごとに、いろんな思いを子供たちに伝えるわけですよ。
投げかけている言葉、思い出に残る話というのを、一つでも覚えていてほしい。
また野球の楽しさ、面白さ、仲間っていいなとか、そういうのをもって卒団してもらいたい。

そして今よく言っているのが、5年生につなげるようなものを何か残していこうと。
試合に勝って優勝旗を返す、そういうことも次ににつなげられるし。
「くりくり大会」だって、また来年出られるように5年生頑張ってよって。
そういうことが伝統としてつながっていくのかなって、思うんです。

何十年か後に…

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この子たちが、中学・高校で活躍する姿を見るのも夢ですね。
それから、何十年か後にこの羽村のグランドで、この子たちと同じ小学生を指導している子が出てこないかな。
監督をする子が出てこないかな、と密かに願ってます。
その監督を、缶コーヒー片手に土手の上から応援する…
そんな日が来ないかなと。
そして、今自分が感じている喜びや大変さを感じてくれて、自分が伝えてきたことを子供たちに伝えている…
そんな場面に遭遇したら、土手の上で人知れず涙してしまうんでしょうね。