• Top
  • スポーツ
  • 「伝統」から「伝説」へ。中大が生まれ変わるとき― 中央大学陸上競技部 駅伝監督 浦田春生 氏
スポーツ

中央大学陸上競技部 駅伝監督インタビュー箱根駅伝

  • ジャンル 箱根駅伝

「伝統」から「伝説」へ。
中大が生まれ変わるとき―

中央大学陸上競技部 駅伝監督 浦田春生 氏

''
2007年夏から中央大学の臨時コーチ、2008年駅伝監督に就任。
浦田監督自身も中央大学で箱根駅伝、
また東京世界陸上やバルセロナ五輪への出場を経験。

これまで87回、箱根駅伝大会に出場。
最多14回の優勝を誇る中央大学が、今年の大会中、初めての棄権。
28年続いたシード権の獲得はならなかった。

「我々はシード権だけを目標にやっているわけではない。頂点を目指す覚悟で」。

浦田監督率いる選手たちは、来年の箱根駅伝出場、
いや箱根での頂点を見据え、10月19日(土)予選会に挑む !

何かが違っている。
なんとなくわかってはいるけれども、メスを入れられなかった。

'' 上級生から下級生にいいものを継承していく。
脈々と受け継がれるものがあったのに、
何かが崩れてしまった。
それが今回の結果だというふうに思って
います。
名門と言われながら中大が、この半世紀近くで
一度しか優勝できていないということにも
つながっていると思う。
そういうところも含めて立て直したい。
力がある中で、 本来の力を発揮させられ
なかったことについては、
私自身、指導者としても 関わっていた
1年生から4年生までの全員に対して、
申し訳なかったという気持ちが当然あります。
なんともできなかった自分がいたのも確かですから。
今回こういう状況になって、そこにメスを入れなきゃいけないというところに
追い込まれたのも事実です。
選手も含めて、危機感を持ってやれるか、やれないかだと。
今回の結果はもちろん反省材料として。
また歴史もひもときながら、いいところは継承し、
悪いところはどんどんいい方向に変えていかなきゃいけないと思います。
同時に結果だけではなくて、選手がやりきったという形を
どれくらい作らせてあげられるか。
最終的には手伝ってやらなきゃいけない立場だと思っています。

人間的にも成長する。
そういう気持ちを持った選手が10人揃えば勝てる。

棄権の後、選手はみんな「挽回するぞ」という気持ちで走っていたと思う。
あの状況の中でよく走ってくれたというのはある。
でもその先には、なんで区間賞をとれなかったんだ、って。
'' 区間でもトップを目指す走りが
確実に出来るような力を、
競技者として持ってほしい。
精神的にも体力的にも。
そういう選手がより多く出てこないと、
頂点に立つチームにはならないと思います。
絶対、区間賞をとる!という強い気持ちが、
1秒でも2秒でも優勝のために貢献できる
走りになりますから。

シードが潰えた時点で、どうしてもそこが
クローズアップされてしまうんですが、
我々の目指すところはやはり頂点。


そこを忘れては、低迷したままの中大になってしまう。
もう上を目指していくっていう、そこに臨んでいってますから。
もう一年、監督をやるというところでは、選手とともに変えられる、
変えなきゃいけないと思っていますので。

目には見えない部分に、チームとして取り組む。

'' 表に出ているのは10人ですが、
その表に隠れてる選手の気持ちが一つになれるかどうか、
それを作れないことにはいいチームになっていかない。
うちなら、スタッフも入れて50数人。
その段階においては表舞台に出られない選手でも、
何かチームに勇気を与えられたりチーム力をあげられたり。
そういう一人一人の積み重ねによって、
駅伝を走る選手ひとりにかかるプレッシャーが
軽減されていくと思います。

同じ団体競技でも その場で何人か替えられる、
野球やサッカーとは違う。
陸上、水泳もそう、個人のレースなんですけど、
ちょっと違うチームという形を作っていかないといけない。
それは普段の練習や生活も含めて、競技に直結した形で、
競技の成績を残すための気持ちのコントロールとか。

そういう目には見えない部分に、
チームとして取り組んでいくことが大事になってきます。

自己コントロールできる人間が最終的には強い。

学生ということでいうと、たとえば授業にきちんと出る選手、全く出ない選手。
授業に出てもノートをとる、とらない、さらにプラスして書き込むかなど…
場面場面でいろんなことが出来るわけです。

''
今年の箱根駅伝で6区を走った(区間3位相当) 代田修平選手。
4年の主将として、自身の走りで下級生に思いを伝える。

自分がどこまで妥協しないで出来るか。
それはレースで我慢できるとか、
落ち着いてできるとか。
すべてじゃないけど、気持ちの上でも
最終的に成長させるというところに
つながる気がします。

大半の陸上の選手がある程度の練習をするし、
質の高い練習も、量もこなしている中で
何が違ってくるか。
そういうところの育成を
していくところの難しさがある。
一人ひとりの基本的なもの、
個性もありますし、
そこをうまく活かせられたらと思っています。

いろんなことを受け入れられる、大きな心の土台をつくる。

'' 我々は、様々なトレーニングを積んでも
吸収できる、身体的な土台を
どんどん作っていかなきゃいけない。

これは、身体の方、スタミナとか
走るための能力的なものなんですが。
あともう一つ。
心の土台というのも、同じように
大きくしていかなきゃいけない。

聞く耳を持てなければ、
いいものも全く取り入れられない。
いいものは繰り返し、繰り返し聞いてると
再確認ができたり、 いろんなものが
自分のものになってくる。
そういうものも含めて心の土台が大きくなる。
人の走り方、レース展開を参考に出来るとか、学ぶものは沢山ある。
心の土台が大きいといろんなことに気が付くようになって、
自分の走りに活かせられると思います。

心に刻んだ悔しさを忘れず、堂々と立ち向かう。

''

個人差もありますが、
駅伝が終わった1月、2月、3月。
駅伝を経験した大半の選手が
無理をしすぎてしまった。
同時に何をやって立て直すんだと
いうところが、具体的に
見えてなかったところもあって。

練習量を増やさなきゃいけない、
練習の質もあげなきゃいけないと、
頑張りすぎて体調を壊したり、ケガをしたり。

順調にいくことばかりではない。
いろんな場面があると思いますけど、
選手も成長するためには
必要な経験だと思います。

あの時、心に刻んだ悔しさを忘れないということも大事だと思う。
それを糧にして進んでいかないと。
あきらめたり、気持ちが腐ってしまっては、人間としての成長は
ないと思いますので。
またちっちゃくまとまってしまってはよくない。
なにかしら自分のものにしていかないと。

今年に関しては、やはり今年の箱根で棄権をしたという
結果が大きくて、 辞めていった者もいる。
新入生も含めて、残ったメンバーでなんとか取り返したい、
いい形で箱根を終わらせたいという意地が…。
棄権をした悔しさを知る仲間で、
この危機を乗り切るってことだと思います。

''