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インタビュー

立川から発信するアーティスト Vol. 2イラストレーター清水美和 さん

Illustrator 清水美和 (Shimizu Miwa)

多摩美術大学(グラフィックデザイン学科専攻) 卒業。
装丁のデザイン事務所に4年間勤めた後、
フリーのイラストレーターとして活動を開始。
「石田倉庫」イベントのパンフレットや
「ムジカノーヴァ」(音楽の友社)の表紙、
絵本、個展など幅広く活躍中。
また、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科
活版実習の指導にも携わっている。
HP: http://miwashimizu.com/

◆絵本のカフェ(原宿)で、個展をした時の作品より。ストーリーに沿って絵を描き、言葉を添えて展示。
「時々“アリエッティっぽい!”と言われることもある」と清水さん。

草むらの中を泳いでいく魚や、
葉のすき間から未来を見つめる女の子など。
様々な“いのち”あるものたちが
あらゆる垣根を超え、一つになる世界を描く
清水美和さん。

水彩の色を取り出すように、
自らの言葉を丁寧に探しながら
語ってくれました。

人を描く時は、
その表情を気にしている。

小さい時から、他の絵の具の色よりも
水彩の滲んでいく感じや色、
こういうタッチが好きでした。

昔と今の私の絵を比べて、
変わったなと思うところはもちろんあります。
ベースは出来てきましたが、
人の顔はまだ確定していません。

女の子の絵について、
よく「自分?」と聞かれます。
人の表情などは気にして描きますが、
この子に意志を持たせようとかは、
考えていません。
でも、表情を気にするということは、
潜在意識のどこかで、
そうした感情もあるのかも
しれないですね。

◆自己主張をしない、なのに静かに、“意志”を感じさせる清水さんの絵。

“絵を描きたい”気持ちは
止められない。

私がこういう世界で
生きていくんだと決めたのは、
美大を受験した時です。
イラストレーターや絵本作家に憧れて、
多摩美のグラフィック
デザイン学科に入りました。

経験として、まずは就職しなければと
卒業後、装丁のデザイン事務所へ。
そこでは、人の描いた絵を
使う立場でした。

本の世界が好きなので、
装丁の仕事に携われたことが
とても有り難かった。
でも3年ほど経った辺りから
やはり絵が描きたくなって、
石田倉庫の赤ビル
(富士見町)に入ったんです。
 

生きてきた中で、
つかんだものや記憶が創作の源。

私の場合、フツフツとイマジネーションが
湧いてくるという感じはあまりありません。
“作ろう!”と画面に向かって、
昔見た色々なものを
思い出したりする感じです。

「ライフワークの一つとして」
家の庭の植物を写真に撮って、一日一枚、
絵を描いていました。
モチーフが決まれば30分程で描きます。

たとえば、雑草は色々な種類があって、
形もそれぞれ違いますね。
調べていくと、種の作り方も違うし。
もともと草や植物が
好きなのもありますけど、
やはり日常のものが気になります。

デザインは人に問いかけ、
絵は自分に問いかける。

デザインをする時と、絵を描く時は
意識を変えています。

デザインは、発注して下さった
方の気持ちを汲んで、
チラシなら伝えるべき要素があるので、
わかりやすいかどうかを意識して。

一方、絵は自分が描いてて気持ちよかったり、
いいなと思えたり。
色の組み合わせや滲みなども
とても気になりますね。

もちろん、絵も仕事として描く場合には、
ご依頼者に お応えしたいと
と思って描いています。

◆「ムジカノーヴァ」 発行:音楽之友社

◆現在は「石田倉庫」ではなく、自宅の一室がアトリエに。
秋に開催される「石田倉庫アートな2日間」の告知用ツールのイラストレーションと、デザインを担当している。

◆昨年、立体作品にも挑戦。言葉を添えて、立体絵本風に。

人の手が入ったものが好き。

描き始める時は新鮮です。
でもだんだん、“これ、うまく行かないかも?”と
思ってきたり。そこから気持ちを立て直すのが
大変です。
そういう時は一旦、描くのをやめて
お昼を食べたり、気分転換をしたり。
新たな目で見ると、
また新鮮な気持ちを取り戻せるので。

もともとデジタルが好きじゃない、
というのもありますけど、
手で描くってことが自分に合ってると思います。

優しさの中にも、
強さがあってほしい。

顔の表情ひとつとっても、
水彩という画材が、どうしても
やさしくなりがちです。
可愛いだけの絵は描きたくない
という思いはあるのですが、
そう感じられてしまう
要素もあるのかな。

知人にすごい絵を描く人がいるんです。
作品にありのままの自分が表われている。
見る人の好みなども入ってしまう
ものかもしれませんが、
絵に対する真摯な態度というか、
本当に描きたいと思って
描いているのが伝わってくる、
そんな絵には惹かれます。

上手いとか下手ではなく、
その人らしさが表れているかどうか。
心に響くような、いいものがあるかどうか。
私の描く絵もまた、世界観が揺るがないもので
あってほしいなぁって思います。

◆本にまとめていない原画もあるので、今後一つにまとめたい、という目標もある。

初心の気持ちを忘れないこと、
睡眠も大事。

私自身、前より評価を気にしなくなったのかな。
細く長くじゃないですけど、
とにかく続けることが大事だと思っています。
描くことで、自信を持つという意味では
ありませんが、絵がなくなってしまったら
自分らしくなくなるというか。
描くってことが自分にあり、
私になるのかなと思います。

日常の中で、なるべくいいものを観ようと、
展覧会などに足を運んだり。
色々な人と接する時間を大切に。
自分には関係ないから観ない、ではなく。
変なところに生えている草の
細かいところや、すれ違う人の服装なども
歩きながら自然に観ていたり。
日々、色々なことがありますけど
他のことを考えない時間を作って、
絵を描くことに集中したい。

どんなことがあっても、
死ぬまで描くことをやめたくない。

いい絵を描く知人がいると
言いましたけど、私も絵に対して
真摯に向かっていきたい。
時代が変わろうが、確固たるもの、
たぶん続けることかなって。
その気持ちがあるので。
悔いのない一日一日を
過ごしていきたいと思います。

清水美和さんの絵が、
一冊の本になりました!

2019年11月30日発売

◆『まりや食堂の「甲斐」- 山谷に生きて -』文・菊池 譲/絵・清水美和 (燦葉出版社)

※記事の内容は掲載時のものです

by T.I