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インタビュー

立川から発信するアーティスト Vol. 8たちかわ交流大使 山下洋輔
with 国立音楽大学ジャズ専修 スペシャルコンサート

「第6回 立川いったい音楽まつり」を一週間後に控えた2017年5月14日(日)。たちかわ交流大使でジャズピアニストの山下洋輔さんプロデュースによるスペシャルコンサートが、たましんRISURUホール大ホールで開催されました。

共演ミュージシャンは、山下さんが招聘教授を務める国立音楽大学ジャズ専修の在学生や卒業生の中から選ばれた9名の皆さん。当日、ホール前には開場を待つ大勢の観客が列をなし、1,200名収容の大ホールはあっという間に満席に。山下さん率いる若手ミュージシャンの熱くて楽しい演奏が、「立川いったい音楽まつり」weekの幕開けを大いに盛り上げました。

音楽のみならず、様々な文化・芸術に目を向け、精力的に活動を行ってきた山下さん。“まちの魅力を広く発信する”役割としての「たちかわ交流大使」に任命されたのは2015年4月のこと。市内各地でコンサートをはじめ、文化・芸術にまつわる様々な活動を通し、立川市のPRに貢献。2016年12月には、立川市より市民表彰も受けました。

今回、山下洋輔さんとスペシャルコンサートに出演した、前途有望な9名のミュージシャンを取材。コンサート当日のリハーサル、本番の模様とあわせてご紹介いたします。

【ピアノ】山下洋輔 (やました・ようすけ)

1969年、山下洋輔トリオを結成、フリー・フォームのエネルギッシュな演奏でジャズ界に大きな衝撃を与える。国内外の一流ジャズ・アーティストとはもとより、和太鼓やシンフォニー・オーケストラとの共演など活動の幅を広げる。88年、山下洋輔ニューヨーク・トリオを結成。国内のみならず世界各国で演奏活動を展開する。
 2009年、「山下洋輔トリオ結成40周年記念コンサート」を開く。15年にはスペシャル・ビッグバンドのCD『新世界より』をリリース。16年2月、ウィーン楽友協会ホールで佐渡裕指揮のトーンキュンストラー管弦楽団と共演し、大成功を収める。
99年芸術選奨文部大臣賞、03年紫綬褒章、12年旭日小綬章受章。国立音楽大学招聘教授。演奏活動のかたわら、多数の著書を持つエッセイストとしても知られる。
公式ホームページ http://www.jamrice.co.jp/yosuke/ (2017.05)

クラシック一辺倒じゃない国立音大。

2004年に、母校の国立音大から
「ジャズの授業も導入したいので
来てほしい」と言われまして。
国立音大っていうのは、 僕がいた頃から
教える先生もいないのに、
生徒が勝手にジャズをやるという
伝統がずっとありました。



先生も、「そんなことやって…」
なんて叱らない。
初代学長の有馬大五郎先生をはじめ、
僕が大学でお世話になった先生方は
みんなジャズが大好き。
作曲科の課題曲なども、僕の個性に
あったものを書けばよかった。
理解のある方ばかりでした。

また先輩たちも ジャズだったり、
映画音楽だったり、
独自の世界を創られましたね。
環境にそういう下地というか、
雰囲気があったんです。
そんな校風だったから、
僕なんかは助かった(笑)。

入学前のピアノのレッスンで
先生から、「あなたの弾き方じゃ
モーツァルトは音楽にならない」と。
特に即興的なベートーベンの曲を
選んでくれました (笑)。

子どもの頃から、楽譜ではなく
耳で聴いて、それらしきものを
弾けちゃった快感があって。
高校卒業後、既にプロで
2年ほどジャズをやっていました。
ジャズというのはそれを許す、
自分で作っちゃう音楽なんですね。

でも、そこからです。
やはり“クラシック”という
巨大な歴史をもった音楽、
これを避けて通ってはダメで、
自分のコンプレックスに
なってしまうと思いまして。
2年遅れで、作曲科に入りました。

立川が文化を発信していく
都市になった。

今年、ファーレアートが20年を経過。
立川が文化発信をしていく都市に
なったというのは確かです。
そもそも立川の歴史がね。
米軍基地で、僕も演奏しましたよ。
幾つ年を重ねても、
なんでも好奇心もっていると
飽きないですね。

その人の「今」が出ていればいい。

学生や卒業生の子たちと一緒にやってて、
未熟と思ったことは1度もないです。
全員、プロフェッショナル。
ジャズは、クラシックと違って
お手本に近づかないと
ダメというのはないんです。
僕とやる以上は、何やってもいい。
ぜんぶ面倒見てやる、そんな気持ち(笑)。

必ずどこかに辿りつく。
そんな強靭さを秘めたジャズ。

お互いの合図や目配せによって、
音楽が出来るというのも
ジャズなんです。
それが“その時の自分”であり、
それを表現していく。

トッチラカッタとしても、
どうにでもなる。
必ずどこかに辿りつく。
ジャズにはそんな強靭さがあります。
だから廃れない。
そういう音楽は他にないですね。

“うまいな”って思ったやつは、
人前に出してやりたくなる。

授業を毎週していると、
実力ってわかるもんなんです。
“あ、こいつはうまいな”って。
ジャズクラブでもどこでも
僕がやっている時は、
「飛び入りしていいよ」って
言うとね、喜んで楽器もってきますよ。
僕を聴きに来られた方々に
「こういうのもいるよ」って、
お見せしたいと思う。

声がかかった時の、うれしさといったら!
僕もそうやって、先輩方に
声をかけてもらってきましたから。
今日のコンサートは、その集大成みたいな
チャンスでもあります。

違うものがぶつかり合い
ながら共存していく。
ジャズも人間社会も同じ。

みんな自分のしたいことを
したいと思うわけで。
それを精いっぱい
出していいんです。

ところが、一緒にやってる
共演者もそう思っている。
その時の折り合いですね。
“そっちもやらせる、
ただし僕にもやらせろよ”っていう。
つまり相手のことは
考えるんですよ。

臆病になって遠慮する必要はない。
お互いに精いっぱい、
自分の表現が出来るような
関係を持つこと。
今日会って一緒に演奏しても、
即興でそれが出来る。
これがよいこと。
何から何まで、
よい経験だと思うことですね。

【パーカッション】福岡高次 (ふくおか・たかし)

1988年東京都出身。国立音楽大学 演奏学科弦管打楽器専修打楽器にて学ぶ。 2年時より同大学のビッグバンド「NEWTIDE JAZZ ORCHESTRA」のパーカッショニストを務め、第 42 ・43 回山野 BIG BAND JAZZ CONTESTに出場、両年とも最優秀賞を受賞し、大会史上初の6連覇を果たす。また渡辺貞夫氏、ベーシストの Ben Williams 、ドラマーのJonathan Blakeと大阪シンフォニーホール、NHKホールで共演。4年時には同バンドのバンドマスターとして東京JAZZに出演、小曽根真氏と共演し好評を得る。その後、単身キューバへパーカッションを学びに渡航。現在、レコーディングやジャズ・ ラテン・ポップス・合唱などジャンルを問わず幅広いフィールドで活動中。

洋輔先生と一緒にさせて頂くと、
普段出せないようなものを、
引っ張り出してもらえる。
どんどん引っ張って行って頂いて、
「音楽してるなぁ」って
一番実感させてもらえる
尊敬するプレイヤーです。
そして、あまり接することのない
後輩たちと一緒に出来る。
こうした機会はとてもうれしいですね

「パーカッションもいい楽器だぞ。
ジャズでもいけるじゃん!」
というのを見せたい。

もともとクラシックが好きで。
そのクラシックを目指して
音大に入って気づいたら、
ラテンパーカッションを
やっていました(笑)。

パーカッションって、
人を踊らせるダンスや
宗教行事に用いられる楽器でも
あるんですけど。
それをジャズにもってくると
いうのは面白いことだと
思っています。
どんなジャンルでもいける
というのが、パーカッションの良さ
でもありますね。

パーカッションは、
日本をハッピーに出来る楽器。

直接素手で叩く楽器なので、
感情が一番ダイレクトに
表れると思います。
一番心に響く楽器で、一番のせられる。
そういう意味でもパーカッション、
ドラム、太鼓というのは
心から人を楽しくさせられる
楽器だと思いますね。

 

【ベース】佐藤潤一 (さとう・じゅんいち)

1991年東京都出身。エレクトリックベースを納浩一、コントラバスを井上陽介、金子健 両氏に師事。現在、国立音楽大学 演奏・創作学科ジャズ専修に在学中。2014年より「NEWTIDE JAZZ ORCHESTRA」にて活動。ジャズをはじめラテン、ファンクなど様々なジャンルで幅広く活躍している。

びっくりですよね。
ライブへ行ったり、
ずっとCDとかで聴いてきた
山下洋輔というスゴイ方と…。
臆せず、どんどんチャレンジ
していきたい。
そのチャレンジした楽しさが
聴いてくださる方に伝わると
いいなって。
普段は出来ないような方々と共演し、
吸収できるものを、自分で
見つけられたらと思っています。

ベースは、性格的に向いてるのかも。
“存分にはしゃいでくれ”って、
僕は見守っているようなタイプ。

演奏を聴くと、その人の人生というか、
そのまま音楽に出ていると
感じることがあります。
それが恋愛の曲だったりすると、
いいなって思えたり。
中には、自分が想像もつかないような
ことを経験してきたんだろうなって、
すごい深みを感じることもあります。

自分のバックグランドみたいなものを
音楽を通して、それも自分から
出せるようになりたい。
聴衆に、自分っていうものが
ちゃんと伝わったらいいなって。

そこに音楽があるだけで、
何かが変わるような気がする。

つらかったり、しんどい時などは、
音楽を聴くより、やはり一人で考えたりって
いうのが多いですね。
でもどこからか、ふと聴こえてきたり、
友達に無理やり誘われて
ライブを聴きに行った時など、
気持ちにちょっと余裕が出来たり、
楽になれたりすることがあります。
大きく心が動かなくても、
何か変わるような気がして。
音楽がもたらす、そうした変化や効果も
大事にしていきたいと思っています。

【ドラムス】濱田省吾 (はまだ・しょうご)

1993年山口県出身。2012年国立音楽大学 演奏学科ジャズ専修に入学、ドラムを高橋徹、神保彰に師事。2014年井上陽介のライブに参加し、ドラマーとして活動を始める。第33回浅草ジャズコンテストにてグランプリを受賞。2016年国立音楽大学を卒業。現在は池田篤、植松孝夫、片倉真由子、椎名豊、中島朱葉の各バンドへ参加。その他、伊藤君子、大口純一郎などのライブにも参加し、精力的に活動している。明海大学ジャズ部講師。

眠れなかったですね。
こんなに大きいホールですることは
なかなかないですし、しかも
山下さんとのライブは初めてで。
国立音大が誇るピアニスト、
山下さんが放つ
音楽のエネルギーはすごいですから。
お客様に、ぜひ楽しんで頂きたいと思いました。

「今日」は人生の通過点。
いい一日になればいいな。

なんでもできるっていうのも
いいんですけど、
ジャズしか出来ないって
いうのも、僕の中では
すごく良く見えるんです。

山下さんも、そういう
タイプの方だと思うんですよね。
すごくかっこいい。
そして、キャリアを重ねても
自分の世界を新たに
作り続けている人って
すごいなぁって。

心を満たせられるような
音楽がしたい。

その時、流れてる音楽の
自分の思う感情、グルーブを
ドラムで表現できたらと思います。
もちろん聴く方の自由なので
伝わればいいし、
違う風に聴こえてもいい。
それがジャズの面白い
ところですね。

エネルギーが熱くなってる感じや、
その強さだったり。
また、クールになってる状態とか。
僕は、音楽のエネルギーに
重点を置いているので、
そういうところで
人と絡めたらいいなぁって。
ドラムを通して
エネルギーを皆さんに伝えたい、
そう思います。

【フルート】片山士駿 (かたやま・しゅん)

1995年千葉県出身。国立音楽大学 演奏学科ジャズ専修を首席で卒業、矢田部賞受賞。第46回山野ビッグバンドジャズコンテストにて、最優秀ソリスト賞を受賞。フルート奏者の受賞は大会史上初となる。第20回、第21回太田市大学ジャズフェスティバルに於いて、ソリスト賞を2年連続受賞。National Flute Association主催「Jazz Artist Competition」に於いて、同部門では日本人初のWinner Playerに選出される。これまでに池田篤、大澤明子、斎藤和志の諸氏に師事。

2011年にジャズ専科が出来、
僕は3期生として山下先生はじめ、
すごくいい環境の中で
学ばせてもらいました。

立川市に所在する教育機関として、
こうした充実した場所があるという事を、
僕達が演奏活動を続けていく中で
知って頂けたら嬉しいです。

大学に対しても感謝で、
気持ちも新たに今、挑んでいるところです。

音楽は、自分ひとりでは出来ない。

フルートは音域も音の高さも
他の楽器と違っていて、
ジャズとイメージが直結しないと
いう方も多いと思うんです。
それゆえに可能性を感じますし、
色んなアプローチが出来るんじゃ
ないかと思っています。

僕が音楽から学んでいることは、
みんながいるから出来るということ。
これはすごく大きい。
自分一人では生きられない、
助けられて生きているという
気持ちを忘れてはいけないと思うし、
そういうことを音楽を通して
聴いてくださる方と
シェア出来たら嬉しいですね。

気づきを与え、
心を蘇らせるアートの力。

培ってきたものが、現代まで
残っているってことを考えると、
やはり音楽、アートは必要な
要素だと感じます。

抽象的な言い方ですけど、
バラバラになったものを
物理的なところではなくて、
内面のところでキュッと
つなげることが
出来るんじゃないかなって。

自分の心が乱れてしまった時に、
絵でも音楽でも
それに触れて感じることで、
自分の中のものが消化されていく。
そして、次のステップに踏み出せるような
前向きな要素があるんじゃないかって
僕は、信じているんですけどね(笑)。

【アルトサックス】中山拓海 (なかやま・たくみ)

1992年静岡県出身。国立音楽大学 演奏学科ジャズ専修首席卒業。これまでに秋吉敏子氏、山下洋輔氏、小曽根真氏等と共演。山野ビッグバンドジャズコンテスト最優秀賞を2年連続受賞、並びに最優秀ソリスト賞受賞。多国籍ジャズ・オーケストラ Asian Youth Jazz Orchestraにてコンサートマスターを務めアジアツアーを行う。アゼルバイジャン共和国で開催されたバクージャズフェスティバルに自身のバンドで出演。国外にも活動の幅を広げる。

山下さんのことは、入学前から
もちろん知っていましたし、
在学中も、何度もライブに
足を運ばせて頂いていました。
飛び入りで共演させて頂いたことも何度か。
リスペクトが前提にある
いい緊張感の中で、いい演奏が生まれる、
いい距離感ではないのかなって思います。

素晴らしい音楽があるから、
つながれる。

サックスも音楽もすごく好きですけど、
自分の表現したいことができれば
別に音楽じゃなくてもいいのかも
と思っています。
でもその手段については、
ある程度自信がないと。
音楽だったら人とつながれるかなって
思っているから、続けている
ところはありますね。

僕は基本、その場にいる方々や、
共演者とつながれればいいと
思っているので。
そして自分が演奏するものに
共鳴してもらえたら、
こんな有り難いことはないです。

自分がやりたいことをしている。
だから焦らないし、
あるのは感謝だけ。

僕が楽器を始めた頃は、
YouTubeとか、まだそんなに
多くの人に観られている
感じはなかったですね。
僕より後に続く世代は、
目から得る情報も多い。
技術的にもうまい人が
どんどん出てくると思います。

でも競争じゃないですし、
張り合うということもない。
需要がなければ、衰退していく、
淘汰されていくだけです。
まずは自分がやりたいことを
しているので。
仮に、消費されるされないという
次元で淘汰されたとしても、
僕はずっとやりたいことを
やっていくだけですし、
そこに対して特に、
焦りや不安はないかな。
少なくとも今はそうですね。

【アルトサックス】篠嶋祐希 (しのじま・ゆうき)

1996年兵庫県出身。12歳よりアルトサックスを始める。15歳の時宮崎隆睦氏に師事。2014年国立音楽大学 演奏・創作学科ジャズ専修4期生として入学、大学にてサックスを池田篤氏、坂東邦宣氏に師事。2015年史上初の社交ダンス舞台「DANCE WITH ME !!」の音楽演奏を担当。2016年JFC All Stars Big Bandに選抜され、「東京Jazz 2016」に出演。

こんなことが二度あるかわからないって、
いうくらいのステージ。
僕は国立音大の在学生代表として、
この舞台に立たせて頂いているので
本当に光栄です。
コンサートを通して、
大学のジャズ専修の魅力や
ここまで成長できるっていうのを、
少しでも伝えられたらいいなって思います。

パワフルで華やかな音を目指して。

サックスの第一印象って、
やはり音から入ると思うんですね。
自分が出す音に、
お客さんが感動してくれる、
そういう音を目指しています。

金管のトランペットという音圧に、
僕らは適わないんです。
サックスを一人で吹くというのも
可能ではあるんですけど、
バンドになった時に
サックスらしい音を出せる。
他の人と演奏することで
その持ち味がもっと上がってくる、
そういう楽器だと僕は思っています。

一緒に演奏するメンバーによって、
吹く内容が全く違ってきますし、
その人と接することでの持ち味が
それぞれに出て、混じり合いながら
一つの音楽を作っていく感じです。

心から一生懸命やること。

アートには、絵とか音楽とか
カタチは色々あると思うんです。
僕の場合は音楽なので、やはり演奏を聴いて
元気になってもらいたい。
心から一生懸命やる、
それがプレイヤーとして
僕が出来ることで、
アートの力かなって思います。

【ピアノ】武本和大 (たけもと・かずひろ)

1995年小金井市出身。2013年YECエレクトーン世界大会第1位。2014年国立音楽大学 演奏・創作学科ジャズ専修に入学。ジャズピアノを小曽根真氏、塩谷哲氏、宮本貴奈氏に師事。同年7月結城市ジャズフェスティバルで宮本貴奈氏、佐藤竹善氏と共演。 11月国立音楽大学附属中学高等学校創立65周年記念演奏会で小原孝氏と共演。2015年世界初ソシアルダンスミュージカル『DANCE WITH ME!!』の総合音楽監督に就任。同年6月グラミー賞よりグラミーキャンプの奨学生に選ばれ招待留学。12月室内合唱団 『日唱』とコラボ。2017年ソシアルダンスミュージカル第2弾『HOTEL DANCE WITH ME!!』にてサウンドディレクターとして作曲、編曲提供。

山下先生はじめ、僕の憧れのプレイヤーと
一緒に舞台が出来る、奇跡のような機会。
山下さんのピアノには何度、
驚かされたか。
魂の交流というか、お互いの魂が
ぶつかり合うんだけど、
相手をちゃんとリスペクトしている。
こうして音楽を学べること、
普段の何気ないこと、生きていること、
そして、来て下さるお客様に
感謝の気持ち。それを、演奏で
伝えられたらって思います。

1音に責任をもつ。
一生をかけて追究していきたい。

大先輩、小曽根真さんの言葉に、
「出来ないものは宝物」があるんです。
そんな宝物が沢山詰まっている
日常の中で、僕は様々な疑問を
持つように心がけています。

音楽は謙虚に向かうべきだし、
降りてくるまで待つことも
大事だと思います。
こういう風に思えたのも、
大学に入って色々な先生方から
叱咤激励を頂いてきたから。

正直、世界一、指が動くプレイヤーに
なりたいと思ったこともあるんです。
でもそこじゃない。
音楽はもっと深いところにあって。
日頃から、色々なことを考えることが
その音楽を表していく上で
大事なことかなって思います。

ピアノを通じて、
世界中の人とつながりたい。

音楽って、人生なんじゃないかなって。
その人の生き様が全部、
音になって表れると思います。
だから嫌なことも逃げたら
ダメだって。
自分しか出来ない経験をしたい。
そして、色々な人と
音楽で会話をしたいと思います。

 

【トランペット】谷村 篤 (たにむら・あつし)

1995年京都府出身。13歳からトランペットを始め、中学・高校の吹奏楽部を経て国立音楽大学 演奏・創作学科ジャズ専修に入学。トランペットを大西由紀・藤井美智・井川昭彦・奥村晶・エリック宮城の各氏に師事。現在、同大4年生。



すごく光栄な場所を与えて頂いて、
あまり眠れませんでした。
ジャズはBGMと捉えられがちだけど
人との会話と同じで、
すごく楽しめるものだよって伝えたい。
また、こういう大きな舞台で緊張したら、
自分がどういう風になるのか。
どれくらい出来るのかということも
試せる、貴重な機会だと感じています。

トランペットは
気難しい生もののよう。

こちらが振り回そうとしたら、
トランペットはいうことを
聞いてくれません。
のってる時はのった音になるし。
自信をもって吹けば、
自信をもった音になる。
その逆もあって、気持ち的なことに
すごく左右されますね。

また、体調などがダイレクトに
現れる楽器なので、
ウォーミングアップを丁寧にしたり。
前の日はよく眠って、
体調を整えることを心がけています。

どちらかというと
僕は緊張体質なんですが、
その緊張を抑制するのではなく
活かすようにしたいなって思っています。
お客様のお顔もなるべく見るようにして、
コミュニケーションを取ろうとしている
のかもしれないですね。

吹かせてもらっている”という
感謝の中で。

気分が沈んでる時とかにライブに行くと
色々なお客様がいて、
演者がいるので気分が
おのずと高揚してきます。
うまい人たちの演奏を聞くと
刺激をもらえますし、もっとこうしよう、
練習しようってエネルギーにもなりますね。

人のあたたかさや、やさしさに
包まれながら、吹かせてもらっているという
感謝が根本にあります。
今の自分を見て下さるお客様に、
「有り難うございます」って
気持ちでこれからも。

 

【ヴォーカル】寝占友梨絵 (ねじめ・ゆりえ)

1990年横浜市出身。2012年国立音楽大学 演奏学科鍵盤楽器専修卒業、演奏応用(ジャズ)コース修了。2015年第34回浅草ジャズコンテストヴォーカル部門グランプリ受賞、初アルバム「Sometime back」リリース。2016年1~3月放映のTBS日曜劇場「家族ノカタチ」挿入歌担当。現在はLIVEや弾き語り、ビッグバンドのゲストヴォーカルとしての出演、レコーディングなど、都内を中心に演奏活動中。

この先、きっと、“思い出す一日”に
なると思います。
山下さんと共演させて頂く
舞台は毎回、大きくて
印象的なものが多いんです。
ボーカルは、やはり年上の先輩方との
共演の機会になるので今回のように、
年下がほとんどという場は珍しい。
学生じゃなく、世に出て
演奏している姿を見て
みんな成長してるなぁ、
このままがんばれ!って(笑)。

歌うと、誰かが喜んでくれた。
ピアノでは出来なかったこと。

ピアノの場合、頭の中で流れている
メロディが、指先に届くまでに
時間がかかるというか。
弾きたいメロディがあるのに、
弾けないもどかしさが常にありました。
歌だと、スッと出てくるのに。

初めてのセッションで歌った時、
みんなの反応がすごくって。
私、歌っていいのかなって。

聴いて下さる方や、共演する方々の
エネルギーが栄養みたいに、
おいしくなっていくのを
感じることがあります。
そういうものを受ける毎に、
中毒になっていきますね。

言葉よりも、音にのせた方が
人の心に入りやすいことを実感。

東北の被災地へ何度もライブに行って、
思ったことなんですけど。
泣けなかった人が、音楽を聴いて
泣けたっていうのが
あるんじゃないかなって。

たとえば「Wonderful World」。
あれって「当たり前のことが幸せでしょ」
って歌ですよね。
被災地の方々は、当たり前のものを、
一瞬にして失くしてしまった。

歌は他の楽器とは違って
言葉をのせられる。
直接、言葉で伝えるよりも
伝えにくいことも音にのせた方が
心に入りやすいのかなって思います。


 

山下洋輔という
大樹の下に集まって、深呼吸。
自由に、思いおもいの音を奏で、
それぞれの場所へまた、
飛び立っていく。

みんなの巣、国立音楽大学ジャズ専修で
音楽を育んだ9人のミュージシャン。
より高い空をもとめて
未来に、音楽を伝えていく。

※記事の内容は掲載時のものです

by   T.I